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聖女の魔力は万能です  作者: 橘由華
第四章
132/205

110 開催決定

ブクマ&評価&誤字報告ありがとうございます!

 アシュレイ侯爵夫人のお茶会から一週間後。

 私がパーティーを主催することが決定していた。

 何を言っているのかよく分からないと言われるかもしれないが、私自身どうしてこうなったのかよく分かっていない。


 と言いたいところだけど、実際にはちゃんと分かっている。

 というのも、国王陛下と宰相様に呼ばれて説明を受けたからね。

 もちろん、発端となったのはアシュレイ侯爵夫人だ。


 お茶会が終わった後、アシュレイ侯爵夫人は夫であるアシュレイ侯爵にお茶会の様子を話したらしい。

 そこで、意外にも私がパーティーの開催について前向きな意見を述べていたと聞いたアシュレイ侯爵は早速、陛下に【聖女】主催のパーティーを開催してもらえるよう掛け合ったそうだ。

 出来る男は仕事が速いわね。

 あまりの速さに、ちょっと驚いた。


 そうして、アシュレイ侯爵からの要請を受けた陛下と宰相様は、この申し出を利用することにした。

【聖女】様とお近付きになる機会が中々与えられず、欲求不満を溜め込んでいる貴族達に、機会を提供して、不満を解消させることにしたのだ。


 陛下も宰相様も申し訳なさそうにしていたけど、私は特に気にしていない。

 王宮でも色々とよくして貰ってるしね。

 お二人に協力するのはやぶさかではない。


 何より、アシュレイ侯爵夫人のお茶会で、どういうパーティーを開こうかと考えていたのはちょっと楽しかった。

 準備は大変そうだけど、やり甲斐はある。

 だから、陛下と宰相様からのパーティーを開催しないかという提案に頷いた。


 ありがたいことに、二人は提案するだけでなく、全面的に協力もしてくれた。

 会場に人手に料理の材料にと、物理的なことは全て王宮側が提供してくれることになったのだ。

 会場は王宮の広間や庭を使ってもいいし、人手は王宮で働く料理人さんや侍女さん達等、使用人さん達の手が借りられる。

 料理の材料も必要な物を文官さんに伝えれば用意してくれるらしい。

 私がすることといえば、内容を考えるくらいだ。

 それも文官さん達と相談しながらできるのだから、予想していたよりも随分と負担は軽くなった。


 その代わりに、パーティーの規模は少し大きくなった。

 当初想定していた規模では小さ過ぎたらしい。

 それでは参加希望者の半分も収容できないので、後日もう一度パーティーを開く必要が出てきますねとは、文官さんの談だ。

 立て続けに何度もパーティーを開きたくはなかったので、文官さんの意見を聞きながら、一度で済む規模で開くことにした。


 そうして準備に奔走すること、一ヶ月半。

 パーティーの日がやって来た。



「設営の方は問題なさそうですね」

「はい。料理もほぼ並べ終わっているようです」

「そのようですね。いい匂いがします」



 パーティーが開始される少し前、身支度を終えた私は最終確認のために会場に来ていた。

 共にいるのは第二王子のレイン殿下だ。

 レイン殿下は【聖女】関連事項の統括として、今日のパーティーの準備に奔走してくれた人の一人だ。


 最初は主催である私の補佐をすると言っていたけど、その実、ほとんど中心となって人員を動かしてくれた。

 私が要望を伝えると、レイン殿下や側近の人達が適切な部署に適切な指示を伝えてくれ、現場が動いてくれるという感じだった。

 レイン殿下達が間に入ってくれたからこそ、比較的順調に、パーティーの準備が整ったんだと思う。


 そういう訳で、このパーティーの中心人物だと思っているのだけど、レイン殿下はというと、あくまで補佐だという立場を崩さなかった。

 一番大変そうなところを担ってくれていたので申し訳なく思っていたのだけど、それを伝えても「これも将来の勉強になりますから」とにこやかに微笑み、謝罪は受け取ってくれなかったのだ。


 まだ十五歳だというのが信じられないくらい、よくできた人だと思う。

 リズもだけど、レイン殿下も年齢よりかなり大人びている。

 これも子供の頃からの教育の賜物なのだろうか。


 レイン殿下が活躍してくれるのは準備だけではない。

 今日のエスコート役も務めてくれる。

 だからか、隣に立つレイン殿下も煌びやかな衣装を着ていた。

 もっとも、これでも昼のパーティー用と言うことで夜用の衣装よりも装飾は抑えられているらしい。



「こういう形式のパーティーは初めてなので、何だか落ち着きませんね」

「不安、ですか? 新しい試みばかりですし」

「不安もありますが、楽しみでもあります。これがニホンのパーティーなんですね」

「えっと、厳密には違いますね。どちらかというとフードフェスティバル、お祭に近いです」

「祭というと、収穫祭のようなものでしょうか?」

「そんな感じです。こちらの方が食事を楽しむ面が強いですけど」



 どこかワクワクしているような表情で会場を見回すレイン殿下に、今日のパーティーのコンセプトを改めて説明する。

 レイン殿下に話したように、今回のパーティは日本のものを元にしている。

 主に参考にしたのは、屋外で行われるフードフェスティバルだ。


 会場となるのは、王宮の庭の一角で、普段は何もない開けた場所だ。

 中央にテーブルや椅子、日除けのパラソルを配置し、その周りを囲むように何棟ものテントが建てられている。


 それらのテントには、各々調理場と配膳用のテーブルが設けられ、ここで調理の仕上げが行われる。

 素材を切ったり何だりの下拵えが行われるのは、今まで通り王宮の厨房でだ。

 このような形式にしたのは、普段料理をしているところを見ない貴族の人達には、料理をしている様子もいい娯楽になるかなと思ったからである。

 そして、パーティーの参加者自身に料理をテントまで取りにいってもらうようにした。


 けれども、この形式を採用するにあたっては少し揉めた。

 安全面に不安があるというのが揉めた理由だ。

 大きな声では言えないけど、貴族ならではのあれやこれやがあるらしい。


 最終的に安全の確保が絶対に必要な人達、例えば陛下や宰相様のような人達については、特別な席を設けることになった。

 陛下達は中央のテーブルではなく、別の区画で食事を取って貰うことになったのだ。

 所謂、VIP席ね。


 そちらは料理が置いてある場所と同じようにテントが設営され、侍従さんが待機する。

 食べたい料理を伝えれば、侍従さん達が持ってきてくれるという訳だ。

 また、毒味役も置かれる。

 更に、もしもの時のために解毒等の状態異常を回復する魔法を使える宮廷魔道師が会場には常駐している。

 ちなみに、私もその人員の一人だ。



「会場は問題なさそうですし、そろそろ入り口に向かいましょうか」

「はい」



 会場を一周した後、レイン殿下に入り口に移動するよう促された。

 これから招待客を迎え、来てくれたお礼を述べるという一大作業があるのだ。

 そして、私にとっては、この挨拶が今日のメインだった。


 王族主催のパーティーでは、主催は最後に登場するのが習わしだ。

 しかし、今回は一般貴族のパーティーと同様に、主催が入り口で挨拶をする形式にした。

 挨拶の後は、銘々で好きに料理を楽しんでもらう予定だ。

 この形式を採用したのは、料理を中心に楽しんで貰うための策の一つだ。

 後から登場すると、皆料理そっちのけで私がいる所に集まっちゃいそうだからね。


 それに、招待客の三分の二は面識のない人、つまり普段【聖女】様に会う機会が中々ない人達だったりする。

 恐らく、今日は【聖女】様に会えるからと気合を入れてやって来るはずだ。

 その中でも、今後会う機会が得られなさそうな人達は、ここぞとばかりに話そうとするだろう。

 要は、挨拶の際の話が長くなることが予想された。


 入り口で挨拶するのは、これを牽制するためでもあった。

 ほら、後ろが(つか)えていると、早く終わらせないとって心理的に圧力がかかるでしょ?

 それに、後ろが詰まっているのを理由に、こちらから話を切り上げやすいってのもあるしね。


 さて、これからの挨拶ラッシュのことを考えると少し気が滅入るけど、頑張りますか。

 心の中で一度気合を入れて、レイン殿下と共に入り口へと向かった。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


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 AT-X:

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 TOKYO MX:

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 MBS:

  4月6日より毎週火曜 27:00~

 BS11:

  4月7日より毎週水曜 24:00~


・配信情報(地上波先行・単独最速配信!)

 ひかりTV:

  4月6日より毎週火曜24:00~

 dTVチャンネル:

  4月10日より毎週土曜24:00~


よろしくお願いいたします!

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