01 召喚
ある日突然【聖女召喚の儀】で異世界に呼び出された。
それは深夜遅く、仕事から帰宅し、玄関で靴を脱ごうとしたところで起こった。
突然足元から白い光が溢れ出し、あまりの眩しさに目を閉じた。
次に目を開けたところ、目の前に見えたのは住み慣れたマンションの台所ではなく、石造りの壁に囲まれた20畳程度の部屋だった。
「成功したぞ!」
「「「おおおおおおおおおおおおお!!!」」」
何やら騒がしいが、それを無視して周りを見渡す。
正面にはサーコートを着込んだ騎士の様な人や足首まであるローブを着込んだ人が思い思いに喜び合っていた。
騎士達はそれぞれの肩を叩き合ったり等しながら笑いあい、ローブの人間達は床にへたり込んでいるものの一仕事やり遂げたと言うような体で顔に仄かな笑みを浮かべている。
床を見ると何やら線が引いてある。
線は黒色で、微妙に床と同化していたため、よく目を凝らさないと見えなかったが、線で引かれた物は魔法陣の様であった。
右側を見ると壁であり、左側を見るとこの部屋で唯一私と同じ様な服を着た女の子がいた。
同じ様な服といってもスーツなどではなくニットにスカートというカジュアルな格好で、有体に言えば現代の服を着ていた。
そう、周りの人間は私と彼女以外、鎧だったりローブだったり、ここはゲームの中か?と突っ込みたくなるような服を着ている。
見慣れた格好をしているのは私と彼女だけだった。
女の子は十代中頃から後半といったところだろうか。
未だ呆然としたまま、床に座り込んでいる。
私と同じく突然この状況に放り込まれたのだろう。
正直なところ、私も何が何だか分からず叫びだしたい気分ではあるが、少しでも落ち着いて状況の把握に努めようと必死だったりする。
周りの状況を一通り把握したところで、左側の女の子の更に向こう側にあるドアが開き、数人の人間が部屋に入ってきた。
先頭はロココスタイル without ヅラといった格好の所謂貴族のような格好をした赤髪の超イケメン、その後ろは黒髪のイケメン騎士が一人と、赤髪の男の子よりは地味な貴族服を着た濃紺の髪、これまたイケメンな青年が一人。
様子から察するに、赤髪君が王子様、騎士は近衛、青年は高い地位にある文官といったところだろうか。
それにしても、赤い髪って……。
あんなドギツイ色に染めるなんて、将来禿げるぞ。
なんて、少しばかり現実逃避をしているうちに、先頭を歩いていた赤髪君は床に座り込んでいる女の子の前に跪くと、すこぶるいい笑顔でこう言った。
「貴女が聖女か?」
……。
…………。
………………。
……………………はい?
短くてごめんなさい。
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