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???
深夜、裏路地。
男が逃げていた。
水簿らしく汚い男だった。
男は、『誰か』に追いかけられるなど慣れていない様子で完全に思考回路が停止したように思える。
ただ、ひたすらにまっすぐと。
けれど、しだいにスピードは落ち、鼓動も早くなる。
それもそのはずで、男ももういい年をした人間
。体力の限界は、若い男よりはるかに近いのだ。
「もうだめだ、おしまいだぁ……」
__『コード3・記憶抹消』
その瞬間、男に悪寒が走った。
「……ッ!?」
背後で、『誰か』が呟いた気がした。
でも、もう男には分からなかった。
__『コード1・存在破壊』
男は消えた。