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上の下  作者: 五石 凪
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放課後

「どっかいった」と私は答えます。

「ふーん、じゃここで待っとこっか」

彼女の優しさに惚れて、自分が嫌になります。

無愛想にする事が唯一の彼女と話す手段なのです。

僕は自分の権威を守りたいのでしょうか。

彼女はそんな僕をわかってくれているようで、無愛想な言葉にも不機嫌にならず僕の自尊心を尊重して自然に答えるのです。

「さっきの問題でね、ルートを外してからがわからなくなっちゃた」

とまた、可愛らしい質問をするのです。

「ルートを外し方がわからなかったって事か、まぁ最近習ったばっかりだから使えこなせないのは当然だろ。数学は口で説明してもわからないからなぁ」

と急に口数が多くなるのですが、

またこれも彼女はお見通しでこの質問をしたに違いないのでした。

八代が帰ってきて、私たち二人の顔をそれぞれ見た後に

「よし、帰ろ!」と言います

私は不満な顔をひとつもしていない飯塚を確認して歩き始めました。

「そういえば佐藤と金本が辻本を鎌倉に誘うとか言ってたで」

と八代が振り向きもせず言いました。

僕は、

「あぁ、行くって返事しといたよ」

と答えて。

「どうして鎌倉なのかしら」と今度は飯塚がこちらを向き話し出します。

僕は自分の手と話しているかのように

「さあ」と相変わらず無愛想なんです。

ここの坂を下りたところで道が三つに分かれていて、そこが三人が分かれるところです。

「じゃね」

珍しく僕が切り出しました。すぐに二人も続き安堵感を感じるのです。

一人になってからは、やはり飯塚の事を考えずにはおられません。

彼女ほど健気のふた文字が似合う人がいるのかなど馬鹿げた事を考え続けました、

しばらくすると向こうから告白してくれたらなーと、

やはりいつまでたっても馬鹿は治りません。

おそらく彼女には彼女なりのポリシーとでも言えるものがあるのだと思います。

この人が馬鹿さの源流は、

生半可に「できる」が故のプライドにありました。

その源流から流れるものはそれはもう汚いみじめで見ていられないような水でした。

まさにその根源は彼の罪の源流と呼ぶにふさわしいものでした。

僕は家に着きました。

家に帰ればいつでもテレビがついていました。

今日は陸上の世界大会を母は見ていました、

必死に走る彼らを見て

「この人たちは何もしてなくとも僕たちはとてつもないスピードで宇宙を動いているって知らないのかな、、、」

母は嬉しそうに僕に必死に彼らが走る理由を教えてくれたけどいささか興味がありません。

僕はこんな調子でテレビに文句をいい、母を笑わせては幸せを感じてました。

このように思った事を直接言って人を笑わせるのは得意なもので、

風景画を必死に描いている人を見ては

彼は写真ってものを知らないのかい?

と横の知人に聞いて笑わせたものです。

これらはさすがに今は本気で言ってはいませんが、昔は本当に思ったものでした。

こんな調子で一日僕の一日は終わっていくのでした。


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