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Sweetheart

「ハーイ、エヴァン。新しいボーイフレンド? 紹介してよ」


元カレのケビンだった。


「ボーイフレンドなんかじゃないよ!」


やや強い口調でエヴァンは否定した。

だけど大嫌いなダニーとの気まずい雰囲気にうんざりしていたエヴァンにはたとえ元カレの参入であってもそれは救いだった。

その時ケビンを見上げるダニーの目が輝いたことにエヴァンは気づかなかった。


「ハーイ、はじめまして。僕はダニー、キミは?」


「僕はケビン」


「よろしくケビン。よかったら僕と踊らない?」


「オーケイ、ダニー。ところでキミはどっち?」


「僕はTOP」


「Good! 」


エヴァンを残してふたりはフロアに出て行った。取り残されたエヴァンはぼんやりとふたりを見ていた。

ダニーとケビンは見つめ合って踊っていた。身長でもルックスでもダントツに目立つふたりだった。僕の元カレとラルフの元カレが今夜たぶんセックスをするんだろうな。ケビンは沖縄にボーイフレンドがいるのに。以前の自分もそうだったけど軽いな、ゲイの世界は。

だけど今の僕は違う、ラルフしかいらない。


たまらなくラルフに会いたくなった。恋なんて惚れた方が負けだね。意地を張ってつれなくしてたけど、結局降参するのは僕の方だな。

電話しようと思ったがさすがに気まずかった。メールも気持ちが伝わらない。直接会ってハグしたい。大人げなかったと謝りたい。

タクシーを拾ってラルフの部屋に向かった。ラルフとダニーの間には何もなかった、なのに僕は嫉妬してた。あてつけにクラブでナンパしようとさえしていた。最低な男だな、エヴァン・ギルバートは。こんな卑しい男がラルフにプロポーズするなんて千年早いよ。


ラルフの部屋アパートに着いた。窓を見上げたが明かりはなかった。お互い合鍵は持たないことにしている。ベルを鳴らすまでもなく冷たく閉ざされたドアが住人の不在を示していた。このままラルフに会えないような不安に襲われた。


もう気まずいとかカッコ悪いとか言ってられない。カッコ悪い男でけっこう、今の僕はラルフの前にひざまずいて許しを乞う哀れなツミビト。

耐え切れずラルフに電話した。一回目のコール音の途中でつながった。


「エヴァン?」


Oh! Fuck! 泣いてるよ、ラルフの声は明らかに泣いている。


「ラルフ、どこにいるんだ?」


「エヴァンのおうち」


「すぐに行く。そこにいてよSweetheart」


自宅アパートのドアの前におおきな人影がうずくまっていた。タクシーから飛び降りたエヴァンは走り寄った。


「ラルフ!」


「エヴァン……」


すでに泣いていたラルフがエヴァンに抱きしめられてさらに泣いた。


「ごめん、ラルフ」


ラルフの肩を抱いて部屋に入るとエヴァンはもう一度恋人を抱きしめてキスをした。


「ごめん、ラルフ。普通こんな時、まず話し合うんだろうけど。どうやら僕は真性のセックス依存症みたいだ。話はあとでいい?」


そう言うとラルフを寝室に誘った。


「キミが上になって」


ベッドに仰向けになったエヴァンは上に乗ったラルフの体を何度も突き上げた。

ラルフ、キミは最高だよ。こんなに相性のいいパートナーはかつていなかった。


「ラルフ、ラルフ!」


 「エヴァン……」 


ふたりは同時に果てた。


「ごめんよ、ラルフ。僕がガキだった。街でキミとダニーがハグしてるのを見て嫉妬したんだ」


ラルフの髪を撫でながらエヴァンが謝った。セックスを仲直りの手段にするのはフェアじゃないかもしれないけど、エヴァンは性欲を抑えることができなかった。


「アタシこそごめんなさい。ダニーと会ったことはちゃんと話すつもりだったの。でも信じて、ダニーとは何もないの」


「ああ、ダニーもそう言ってたよ。誘ったけど断られたって」


「エヴァン、ダニーに会ったの?」


「クラブで会ったんだ。悔しいけどホントにかっこいいよな、ダニー・トンプソン」


「でもアタシにはエヴァンがいちばんなの」


そう言うとラルフはもぐってエヴァン自身を口に含んだ。エヴァンはたちまち復活した。



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