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君と過ごす時間


 あれから、マリと共に過ごし、絵を完成させる為に時間を費やした。

 マリは色付いていく絵を見てはキラキラとした目を向け、喜んでいたのをよく覚えている。

 マリと一緒に居る時間はいつも通りの風景と違って、退屈のない、鮮明に色の付いた世界に感じていた。

 共に過ごした時間は楽しいことばかり。もっと僕はマリと一緒に居たい、過ごしたい。欲求は高まっていくばかりで、マリに触れている、マリに触れられているという小さいことだけでも僕の気持ちは(たかぶ)った。

 僕が猫だったら、君が人間だったら。異種族(いしゅぞく)だというその現実が重く胸に突き刺さる。

 夢に何度も出てくる想像でしかない人間のマリと猫の姿のマリ。君が人間だったら僕は確実に君に惹かれていたのだろうか。君は僕を見てくれるということは有り得たのだろうか。

 僕は絵の具に(まみ)れた体のまま、ぼう、とアトリエの天井を見上げた。

 君が人間だったら、僕が猫だったら。

 種族の壁は越えられないという現実。これは世の(ことわり)だからしょうがないで片付いてしまうことだった。


 ──────



 夢で見た咲き誇る花達の園。あの場所は実在するのだろうか。

 僕はまた絵に向き合い、止まっていた筆を動かした。

 今の僕の思考は、あの花畑はとても綺麗だったと、行ってみたいと思うという好奇心だった。

 絵の背景にある桃色の花。花の種類には詳しくはないが、夢に出てきた花はこういう花だったと思った。

「フランさんはこの桃色の花を見たこと有りますか?」

「いや、ないよ。マリは見たことがあるのかい?」

「はい。見たことがあります。私とフランさんが初めて会った所の近くの花畑に咲いてる花何です。私、この花が大好きでして。種類が分らかないのがとても悲しいんですけどね」

 マリは笑い混じりにそう言い、描かれた花を見詰めていた。

 僕は花畑を見たいの一心で立ち上がり、作業を中断してマリに花畑を見に行かないかと誘った。マリは迷いなく了承し、僕はつなぎ姿のままマリを抱き抱えてアトリエを出た。

 花畑が見れる。それだけがとても楽しみでわくわくが止まらなかった。

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