理想、好意
優しくも美しい微笑みを浮かべる想像でしかない人間の姿のマリ。真っ直ぐに見詰めてくる愛らしい猫のマリ。描かれていく君の姿がとても嬉しく、心は子供のような無邪気な気持ちになって行く。
綺麗な君は美しい。美しいからこそ絵になるのだ。
鈴月の君。僕はそう強く呼びたい。
鈴のように愛らしく、綺麗な音をただ純粋に響かせ、月のように美しくも優しい光を放つ君を見ているととても幸福だ。
一人と一匹の静かな空間に、その静けさを静かに壊すように鉛筆が走る音が耳に届く。
今日は鉛筆での下絵だけだ。明日は本気の色付けをしよう。
君の金色の双眸は本当に月のようだ。光は優しい光を放つ月光のようで、僕は吸い込まれてしまったのだ。
囚われていく。たった一日だけ喋って戯れて、ただそれだけだったのに、本当に君は印象的だった。
他の猫は目じゃない。特出として違う、他と輝きが違う君に惹かれたのだ。
これだけは考えてしまう。何故僕は人間でマリは猫なのだろう、と。
──────
描き終えると、僕は一つ息を吐いてから紙に描かれた人間のマリと本来のマリを見詰めた。
満足出来る出来になった。早く色を付けたい。そう強く僕は思った。
「マリ。下絵だけど絵が出来たよ。おいで、マリ」
マリは綺麗に着地し、軽い足取りで僕の方に歩いてくる。
マリは僕の隣に来て、見上げてきた。その姿の愛らしさに僕は笑みを溢し、マリを抱き抱えてマリに僕の描いた絵を見せた。
マリは感嘆の声を漏らす。
……だが、途端にマリは悲しそうな声を落とした。
「――私が人間だったら、この人のような美しい女性になれたでしょうか」
「マリ?」
「フランさん。また明日来ます。これからはまた会いましょう?」
「……マリ。僕は君と暮らしたい。君が嫌ならいい。だから、少しでもいいからこの家に居てはくれないかい?」
マリは何拍か置いてから、静かにありがとうございますと言った。
僕は嬉しくなり、マリを抱き締めた。
――そして、僕とマリは共有する生活を送るようになっていった。