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君に囚われていく


 家に着き、僕は今日描いた湖の風景画をアトリエに置いてから、僕は寝室にスケッチブックが置いてあるというのを思い出して、僕はスケッチブックに絵を描こうと部屋へと向かった。

 寝室に着き、スケッチブックが置いてあると思っていたテーブルの上にスケッチブックや鉛筆、色鉛筆にパステルなどの画材がバラバラに置いてあった。

 僕はスケッチブックと鉛筆を手に取り、椅子に座る。そして鉛筆を走らせた。

 (えが)かれていく絵は、とても愛らしい猫の姿だった。この猫の絵は瞬時にマリだと僕は気付いた。

 僕は何度もマリの姿を描き続けた。美しくも愛らしい君。今日出会ったばかりだというのに、またあの姿を見たくなってしまった。声を聞きたい。あの鈴の様な愛らしい声を、とても聞きたい。

 ……君が『欲しい』。

 僕は何故一匹の猫に対してこんなにも欲が出ているのだ。僕はそれくらいはまってしまったのだろうか。

 君が人間だったら僕は完全に恋に落ちていたのかもしれない。僕は、きっと誰よりも君を愛するだろう。


 ──────


 どれくらいマリの絵を描いただろう。

 僕は静かに、描かれたマリを見詰め、途端に(むな)しい気持ちになった。

 ……何故こんなにも僕はマリを愛しいと思っているのだろう。

 僕は蚊の鳴くような声でマリの名を口に出した。

 ……マリ、この感情が分からないんだ。マリ、マリ。

 僕は、描かれているマリに見詰められてる錯覚に(とら)われる。真っ直ぐに見詰められ、その瞳がどんなに美しかったのかと、これはモノクロの絵なのに、あの月のような金色の瞳が鮮明に思い出される。

「……僕はどうしてしまったのだろう。僕は君に心を奪われてしまったのだろうか。……マリ、僕は君と一緒に居たいよ」

 胸が締め付けられ、その苦しさに涙が出そうになる。

 どんな女性よりも君が欲しい。

 君に強い印象を受けた僕は、このままだと本当に君に全てを奪われるかもしれない。

 この感情に何と名前を付けようか。多分、一目惚れだったのかもしれない。だが、認めていいのか分からない。

 君は猫で僕は人間で、相容(あいい)れない、一つになれない存在なのだから。

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