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再会、幸せの月の下



 僕は寝着のままだというのにも関わらず外へと駆け出していた。外は幸いなことに人が居なかった。

 ……マリが呼んでいる。マリはきっとどこかで僕を待っている。そう信じて僕は一心不乱に走った。

 どんどん足が進んでいく。足を止める暇はない、マリはどこかに居る筈だ。

 ……マリ、マリ。今会いに行くよ。待っていて、直ぐに見付けるから。

 僕の脳内を占めるのはマリのことだけ。マリに会いたい、マリと再会出来たら何と伝えよう。

 これだけは思う。ただ純粋に僕はマリを抱き締めたい。あの小さい体を、もう離さんと言わんばかりに抱き締めたい。

 会いたい、会いたい。早く、早く君の元へ行かなければ。

 無我夢中に走っていたら、甘い花の香りが鼻孔を掠める。纏わりつくような、でもその愛らしい香りは心を癒してくれる。

 着いた先は、夢で見た、マリと来たあの花畑だった。

 中央に誰か居る。月明かりに照らされた女性。白髪のショートカットの女性が歌を歌いながらそこに居たのだ。

 僕は迷わずに『彼女』の名を叫んだ。


「マリ!」


 僕の声に気付いた女性は歌うのを止め、ゆっくりと僕の方を向いた。

 金色の双眸(そうぼう)。猫のような愛嬌のある猫目が愛らしさを見せ、だが、とても綺麗な、美しい女性の姿が(あらわ)になった。

 女性は美しい笑みを浮かべ、僕の名を呼んだ。

 僕は走り出し、女性に駆け寄り、思い切り力一杯に抱き締めた。

 ……マリが人間の姿になって、また僕の前に現れた。夢でも幻像でもいいから、ここにマリが居るという事実がとても嬉しかった。

「フランさん、お久しぶりです。私、やっと願いが叶って人間になれたんです。神様に感謝ですね」

「マリ、マリ……。僕は夢でも見ているのかな? とても信じられないよ。君は本当に僕の知ってるマリでいいのかい?」

「フランさん、酷いです。信じられないなら、頬を(つね)ってみて下さい。これは現実だということを痛感してみて下さい」

 マリはキッと僕を(にら)み、その姿も愛らしいと思って、マリの言葉に従って思い切り右頬を抓った。

 痛みがくる。間違いない、これは現実だ。

「これは、現実だったんだね。……あれ? 涙が、止まらない……」

 感動のあまり僕は泣いてしまった。何度も袖で涙を拭い、僕は涙声混じりにマリの名を呼び続けた。

「マリ、マリ。君と再会出来て良かった。もう、離したくない、離れたくない。僕は誰よりも君を愛してるから」

 柔らかい物が唇に触れる。マリは嬉しそうに微笑み、僕を優しく抱き締めた。

 触れ合えている。こんなにも近くで、しかも人間同士という事実がとても幸福で満たされた。

 ――神様、貴方を悪く言って申し訳ありませんでした。神様のお陰で僕はマリと再会出来ました。僕は……僕達は感謝しきれない程幸福です。

 心から神様に感謝を述べ、僕は確かにあるマリの存在を感じた。

 月明かりに照らされた僕達の姿を見る者は一人も居らず、僕達はただ再会出来た幸福に浸り、抱き締め合っていた。







Fin

これにてこの話は終了します。

この物語は去年の夏に書いた話でした。最初は、二年前に人間と猫の物語云々を、偶々書いてた未だに公開出来なさそうなボーイズラブ小説にチラ、と作中に出てきたくらいの程度だったんです。そして、初の完結小説が当作品でした。

この拙作に目を通して頂き、ありがとうございました。

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