光代のバルーン考察 1
部屋の中で机に肘を置き、窓の外をぼうっと眺めながら光代は考えていた。
もしこの家がバルーンだったら?
もしこの家がバルーンだったらどうなるのかしら?
え?
バルーンっ何?
バルーンってそもそも何なの。バルーンって一体何なんかしら!
風船よね。
バルーンって多分風船のことよね。風船の英語バージョンよね。
英語バージョンって・・・・・・まあ英語よね。
だからバルーンは風船の英語!
風船を英語でいったときの言葉なのよ!
それで・・・・・・だからそのバルーンがあれなのよね。もしこの家が、この家全体がバルーンで出来ていたらどうなるのか、ということをこれから私は今考えようとしてるのよ。
考えようとしているんだわ!
ああ今日もまたバイトに落ちてしまった。
落ちてしまったというか、バイトを探すための電話を今日もかけられず仕舞いだった。
つまり面接の予約も取り付けられなかったというわけね。
トホホ・・・・・・
私ったら情けないわ。
情けない!
本当に情けないんだわ。だってバイト先に電話すらかけられないんですからね。面接の約束すら取り付けられないのよ。
どうかしてるわ。
マジでどうかしてるんだわ。
整形でもしたほうがいいかも。
整形でもして自分の外見にとりあえずコンプレックスをなくして、それから社会的な活動のすることを考えていった方がいいかも。
整形とか費用かかるやん!
整形とか費用かかるやん何いってんの。
お金ないっつーの!
私お金ないから、だからこうしてバイトを頑張って探そうとしているのに、そのバイトを探すためにまたお金がいるだなんてね。
死んでやろうかしら!
もうそんなわけのわからない、理不尽な悪循環しか私に提供できないようだったら、もうそんな世の中のことなんてどうでいいわ。
死んでやる。
死んでやりますとも!
死ぬのはさすがに控えますけれども・・・・・・いやさすがに死ぬのはまあちょっとね、まあちょっと考えさせてもらいますけれどもね・・・・・・
だって死ぬって大変なことですよ?
ものすごいことですよ?
きっとこんなクソみたいな私でも泣いてくれる人はいるでしょうし、それに葬式とか大変!
葬式の準備とか本当に大変なんですからね。
だからそんな簡単に決めちゃいけませんって。その場の勢いだけ、みたいな感じで自らの死を踏み切っちゃいけないですって。
伊勢エビとかありますやん。
伊勢エビとかサッカーのチャンピオンズリーグとかありますやん。
ほかにもいろいろ楽しいことありますよ。
楽しいこととかしてみたいこととか冷静になったら絶対に一杯あるはずですって。
だから、ね。
だからそんな一時の気の迷いで死ぬとか言っちゃダメ。そんなすぐに死ぬとか言っちゃダメですからね。
伊勢エビもサッカーのチャンピオンズリーグの観戦も金かかるんじゃボケ!
伊勢エビとかチャンピオンズリーグとか正味どえらい金かかって仕方のないことなんじゃボケ!
そんなことできるか。
そんなことできるかやし食えるか!
結局金がないと何にもできひんっていう話やないか。
だから私は今そのお金を稼ぐために何とかバイトでも決めて頑張りたいと思ってるっていってるんじゃないか!
もうどうにかしてよー。
もう誰でもいいから私に正規非正規問わずの、とりあえずお金の稼げる仕事を紹介してください。紹介してくれた暁には、もう身をこにして一生懸命に働きますからー。
さて、もうそろそろバルーンの考察を再開しよ。
どうせこの世には天使も悪魔もおらん。自分にあう仕事を見つけてこれるのは自分だけだ。
だったらあと少しだけ。
せめて今日くらいは厳しい現実のことを忘れて楽しい空想の世界に浸りたい。
今日だったらバルーンの世界に浸りたいんだわ!
光代はそう思うと、机に顔を突っ伏して大きなアクビをした。
部屋には夕日が差し込んでいる。
誰かが部屋のドアをノックする音がした。