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Act2・稀人

稀人…この世界とは別の世界から、何らかの方法、或いはアクシデントによってこの世界に来てしまった者の事を指す。

言葉の通り、確認される事が極稀で、最後に正式に確認されたのは凡そ一世紀も前。

稀人はその殆どが特異な才能を持った人物らしく、必ず歴史に名を残している。


そんな説明を受け、俺は内心溜め息を吐いた。

いやもう、コレまるっきし俺も当てはまるよね。

師匠の魔術実験のアクシデントでこの世界に来てるし、魔術っていう明らかにこの世界の魔法からかけ離れた力を持ってるし。


「その話を聞く限り、確実に私はその稀人になりますね」


「そうか…」


俺の返答に国王は目を瞑った。

謁見の間に沈黙がさし、暫く経った後に「では…」とそう前置きしてから国王は目を開き俺を見て、


「そなたは、この世界で何を成したい?」


そう問い掛けてきた。

その眼差しは、感情を感じさせず、如何なる答えも受け止めるような寛容さを持っていた。

でもまあ、俺の回答は最初から決まっているワケで。

国王がそこまで覚悟するような理由でもないんだが。


「無事に旅を終えてクアリアの街に戻る。それだけです」


『…………………は?』


そんな俺の答えに国王も宰臣達もそれにフィリスも異口同音に驚きの声を発した。

つーかフィリスまで驚くことないだろ…。


「旅を無事に終える…。本当にそれだけなのか?」


「寧ろ他に何かありますか?」


あくまでも堂々とそう言い返す。

多分、国王の内心的には俺が国を作りたいだの、どこぞの国の御抱えになるだのと荒唐無稽な事が考えられていたのだろう。

だが残念だったな。俺は基本的にチキンハートなんだよ、そんな大それた事、やろうという発想すら湧かない。


「そう、か……全くこれでは私が空回りしただけだな」


「何をお考えだったのかは存じませんが、これだけは言えます」


「む?」


俺が言葉を発するとこの場にいる全員の視線が集中する。

さて、皆さんどうでるかな?


「私は、身に降りかかる火の粉は全力で払います」


「……そうか、ならば気を付けんとな。私は、そなたらと敵対したくはない」


国王は俺の言葉に深く頷くとそう言った。


「だが、出来れば我が娘、ファルメとは仲良くしてやってほしい。どうにもあの娘は人付き合いが苦手でな」


「それにつきましてはご心配なく。こちらのフィリスが既にとても仲良くなっていますので」


「あ、えっと、ファル……第三王女様と仲良くさせていただいてます!」


唐突に話を振られたからか顔を真っ赤にしたフィリスが慌てて緊張混じりにそう言った。

その反応に朗らかに笑いながら国王はうんうんと満足そうに頷くと声を上げた。


「その言葉が聞けただけで安心だ。…さて、名残惜しいがそろそろ終わるとしよう」


「本日はお招きいただき、ありがとうございました」


俺の言葉を最後に、宰臣の号令で謁見はアッサリと終了した。

さて、この後はお茶会でか……多分、ファルメも居るんだろうな。


「はあ…緊張した…」



「そうか?」


「普通、王族を前にあんな風にスラスラと話せる方が可笑しいんだよ。というか、クレンが稀人だってことに一番驚いた。なんで言ってくれなかったの?」


謁見の間を抜け、中庭へとメイドさんの案内を受けながら廊下を歩いていると、横からフィリスが顔を覗き込んできた。


「いや、そもそも稀人っていうものを知らなかったし、普通に考えて、自分異世界から来ました~。なんて言って信じて貰えると思うか?」


「それは…そうだけど」


「まあ、フィリスを信じて相談できなかった俺が悪いんだ。ごめんな」


俺がフィリスの目を見て謝ると、フィリスはニッコリと笑い、


「うん、許す!」


とそう言った。

やれやれ、ホントこの笑顔は破壊力あるな……心臓に悪いぜ、全く。













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