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Act2・雑談と引き取り

俺とフィリスが揃って呆けた表情を浮かべたのを見て、ウェルグさんは慌てて言葉を足す。


「すまない、言葉が足りなかった。アークエネミー・ルナヴォルフの討伐をたった二人で見事遂行してみせたクレン殿達を一目みたいらしく。当然、討伐したことへの褒賞も与えるそうだ」


「アークエネミー!?」


ウェルグさんの言葉にファルメが目を剥いて驚く。

…まあ、前に聞いた話だと天災と同義の存在を、俺とフィリスのたった二人で跡形もなく消し飛ばしたとあれば驚くか。


「ウ、ウェルグそれは真か!?この二人がアークエネミーを討伐したというのは!」

「はい。クアリアの街の長、それにギルドマスターがそう言っていましたので、間違いないかと」


「殺人鬼を余裕で退けたり、アークエネミーを倒したりと……本当に何者なんだクレン達は」


「普通の冒険者だ」


「だよ?」


「「ダウト」」


俺達の言葉に王女と騎士が揃ってそう言う。

ウェルグは咳払いを一つして、場の空気を整えた後、口を開く。


「…それで、お二方には明日には登城していただきたいのです」


「待ってくれ、こっちは儀礼服も何も持っちゃいないぞ?」


「そちらの方は此方でご用意させていただきますので、ご安心を」


「私達、礼儀作法とかよくわかんないけど…」


「最低限の礼節だけ守って戴ければ結構です」


「「……」」


見事に完全論破されてしまった。ちらりとフィリスを見ると、同じようにこちらを見るフィリスと目が合う。


(どうするよ?)


(もう行くしかないんじゃない?)


(でもなあ…)


アイコンタクトを交わしながら俺は悩む。

…なんかもう、厄介事の匂いがするんだよなあ……。

かといって拒否っても不興をかうだけだし…あれ?最初から選択肢無いじゃん!?


「……わかった、行くよ」


溜め息をついて一言を絞り出すように言う。

王家、引いては国家首脳部は得てして魑魅魍魎の巣窟だ。俺の居た世界ではどの時代もそんなもんで似たようなものだったし、この世界の国家首脳部が違うとは言い切れない。


「ありがとうございます。では明日、日が登ってから三回目の鐘が鳴るときにお迎えに上がりますので」


「ファルメは?」


「無論、こちらで引き取らせていただきます」


有無を言わせない雰囲気を出しながらそう断言するウェルグさんにファルメはガクリと肩を下げる。


「そ、そんな…ダメなのか?」


「……先伸ばしにすればするほど王様と王妃様の説教が長くなりますよ」


「むぅ……」


ウェルグさんの言葉を聞いてファルメは沈黙し、一つ頷いた。


「はあ…わかった、諦めて連行されよう。父様と母様の説教延長は流石に嫌だ」


ファルメはそう言うと心底嫌そうな顔をして肩を竦めた。

そんなに怖いのだろうか、その説教。


とりあえずの話が纏まったところで、ウェルグさんが椅子から立ち上がり、城に戻ると言ってきた。


「さて、我々はそろそろ城に戻らせていただきます。さ、王女様こちらに」


「うぅ…」


「まあ、明日また会えるんだからそんな渋んなって」


「ウェルグさん困らせちゃダメだよ」


俺とフィリスの言葉を聞いてファルメは大きく溜め息をついてから首肯する。


「本当に残念だが、仕方ない。では二人とも、また明日会おう」


そう言い残して、ファルメはウェルグさんに連れられて部屋を出ていった。

パタンと扉が閉まる音を最後に静寂が部屋に降りる。

先の会話の途中で点けた蝋燭の火が部屋を不安定ながらも明るく照らしていた。


「かあぁ~、まさか登城することになるとはなぁ」


「私はなんとなく予想してたけどね」


「マジで!?」


俺の驚いた様子にフィリスは苦笑いを浮かべてからジュースを一口飲み、座っていた椅子の背もたれにもたれ掛かった。


「いやいや、普通に考えてそうなるでしょ?存在そのものが自然災害って言われる程のアークエネミーをたった二人で倒しちゃったんだよ?」


「いや、リンドのオッサンとかが言ってた割には、少し強い位でまだ余裕はあったぞ?」


実際、街を防衛する必要が無かったら結構な余裕をもって倒せた相手だ。

被害規模が相当なモノになるが。

フィリスは俺のそんな様子を見て頭をおさえると溜め息をついた。

失礼な。


「ああ、うん。クレンの強さは規格外なのは分かったよ。でも、これからはあんまり力を出しすぎない方が良いかもね」


「そこらへんは、理解してるよ。俺だって好き好んで『国』のゴタゴタに巻き込まれたくはないからな」


まあ、それも手遅れな感じではあるが。

そう言ったことは明日、王様にでも『交渉』すれば大丈夫だろう。



「何にしても、明日は忙しくなりそうだな」


「だね。あ~王様との謁見かあ~」


「緊張しすぎて喋るとき噛むなよ?」


「約束しかねます」


「やれやれ…」


そんな他愛ない話をしながら椅子から立ち上がり、夕飯にありつくために部屋を出た。



さて、明日はどうなることやら……




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