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Act2・騎士と王の呼び出し

情報屋から王都を席巻している殺人鬼『屠殺姫』について聞き出した後、時間が時間だったので俺達は残りの買い物を済ませ宿へと戻ってきていた。


「殺人鬼、かあ…やっぱりクレンはトラブルメイカーだよね」


「俺がトラブルを起こしたんじゃない。トラブルの方からやって来るんだ」


「それも十分トラブルメイカーじゃないか…?」


ぐ…ファルメに論破されてしまった。

夕日が射し込むなか、帰り際に買ってきたユリオ(リンゴに似た果実。味もリンゴっぽい)のジュースを飲みながら部屋で談笑する。

今はとりあえず情報屋から聞いた話を二人に話したところだ。


「というか私はそんな危険な奴に狙われていたのか…」


「クレンが到達するのがあと少し遅かったらって考えると、ゾッとしないね」


「ま、過ぎた事は考えても仕方ねえよ。今生きてんだから、そういうの考えんのは止めとこうぜ」



ジュースを飲み干し、ファルメに向かってそう言うと、どこかホッとした様子で頷いてくれた。


「んで、ファルメは今日もここで休むのか?」


「「あ、忘れてた」」


「おいおい…」


本気で忘れてたのか二人そろってポカンと口を開ける。つかフィリスまで忘れてたんかい。


「はあ…ったく、んでどうすんだ?泊まるんだったら別に構わないが」


「うぅむ……」


俺の言葉にファルメは小さく唸りながら悩む。

俺としてはどちらでも構わない。帰ると言うなら隠蔽魔術なり何なりを使って城まで送るだけだし、もう一泊するというなら俺が下のロビーで布団を借りて寝るだけの事だ。

そしてとっぷり三十秒位考え込んでファルメが顔を上げるのと、鎧を着込んだ男が部屋のドアを開いたのは同時だった。


「よし、今日も泊まる!」



「クレンという男の部屋はここで宜しいか!」



ファルメの声と謎の騎士みたいな男の声が部屋に響き、そのままシンと静まり返る。

ファルメと謎の騎士みたいな男は目線があったまま硬直し唖然とした表情を浮かべている。

そんな妙にシュールな光景に思わず俺とフィリスは顔を見合わせ、一言。



「「何、この状況」」


この何とも締まらない邂逅が俺とキルバーン公国王家との長い付き合いの始まりになるとはこの時は思いもしなかった。










「……あー、つまりアークエネミーを倒した俺達を探してクアリアの街までいって、俺達が王都のここに泊まる事をリンドのオッサンから聞いて…」


「それで急いでとって返してここに来たら」


「私が居た、と」


「…その通りです」


ウェルグと名乗った騎士みたいな男…から話を聞いて纏めると、ウェルグは酷く疲労した様子で肩を落とした。ちなみにファルメの呼び捨てについてはファルメ自身の許可があったということでなにも言われなかった。


「えーっとだな。何かスイマセン」



「いや、クレン殿が謝る必要は無い。それよりも…」


途中で言葉を切り、ウェルグはジロリとファルメを見る。ファルメはその視線から逃げるように顔を反らし、夕焼け綺麗だな~とか言っている。


「何故、姫様がここに居られるのかじっくりと聞かせて戴きたいのですが?」


「うっ…」


ウェルグさん、語尾に疑問符付いてるけどその内に秘めてんのは命令ですよね。めっちゃ怖い。師匠が楽しみにしていたケーキを使い魔に食われてキレた時位に怖い。


「えぇとだな。それはその、たまには市井の状況も見てみたいな~と」


「はあぁ…そうであればそうと、近衛騎士の誰かをお供に連れていって下さい。城に戻った時大騒ぎで大変だったんですから。ただでさえ今王都は得体の知れない殺人鬼の噂が立って…」


「まあ、実際ファルメは襲われてたしな」


「………………は?」


俺がボソッと言った一言にウェルグさんは目を見開いて固まった。


「あれ?俺なんか不味いこといったか?」


「「思いっきり言ったわ!!」」


そう言われてから二人同時に左右から頭を叩かれる。

結構痛いんだが……


「何時もは空気をよめるのにどうしてこうゆうタイミングでボケを発動するのかなあ!?」

「城に帰ってからの説教の量が今ので確実に倍になってしまったではないか!」


「いや、ボケをかましたつもりはないんだが、っていうかファルメのそれは逆恨みだろ!?」



わいわいガヤガヤと俺達がやってる傍らでウェルグさんが真っ白になっていっているが……そっとしておこう。






それから全員が落ち着きを取り戻し、話を再開させたのは日が沈み、月が顔を覗かせたころだった。

そして真面目な話が出来る雰囲気になったところで、ウェルグさんが俺とフィリスを見てこう言った。



「お二方を王が謁見したいとの事で城に上がっていただきたいのです」



と。それに対する俺達の返答は至ってシンプルな一言だった。


「「……はい?」」




……どうやらまた面倒な事が起こるみたいだ。








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