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Act2・王女と平穏

「……で、クレン。散々心配かけさせてくれた挙句、女の子つれて帰ってきたんだ…何か遺言は?」


「理由すら聞き入れて貰えない!?」



時刻は体感で午前零時頃、王女様と連れだって月兎の眠り姫へと戻ってきた俺を待っていたのは憤慨した様子で頬を膨らませたフィリスだった。


「理由?何かあるのカナ?下らない理由だったら射抜くからね?」


「イ、イエスマム…」


何を射抜くのかとか絶対聞きたくない。聞いちゃまずい…何故かって?命の危険を感じたからだよ!

兎に角、話を聞く姿勢になったフィリスにここに至るまでの事を説明する。

ファルメの身分については宿に着くまでに話し合い、俺のパートナーだという至極簡単な理由で明かす事にOKを貰った。


「――ってことで、事ここに至るってワケだ」


「…………」


一通り話し終え、素直に聞き入っていたフィリスの反応を待つ。


「…うん、まぁあれだね。一つ言えることがあるとすれば、クレンは色んなトラブルを拾ってくるね」


「人をトラブルメイカーか何かみたいに言うなよ」


「にしても王女様かぁ~…やっぱり敬語とかで話した方がいいのかな?」


「いや、普段のしゃべり方で構わない。あまり敬語は好きじゃないんだ」



「俺のツッコミはスルーですかそうですか……」


畜生、屋内だってのに雨が降ってやがるぜ……






閑話休題。


その後、俺とフィリスで相談しあった結果、ファルメを匿う事が決定した。

翌朝、とりあえず泊まる人数が一人増えたことを宿のオーナーである、ミュリさんに伝えると、


「あら~、一人増えたのね~♪やっぱり男の子なのねぇ」


と明らかに検討違いの方向で納得して、オーケーを出された。

……俺の後ろに立ってた二人が赤面していた事はこの際気にしない。気にしたらマズイ。

兎に角、これでファルメを匿う準備は整ったので、これからどうするかを部屋で相談する。



「さて、とりあえずはどうするか…」

「旅道具の補充は昨日の内に済ませちゃったし、街中をブラリする?」


「まあ、それも悪くないか……ファルメはそれでいいか?」


「いや、匿われている人間が外に出るわけには…とゆうか自然と呼び捨てで呼んできたな」


ファルメに話を振ると戸惑ったような反応をみせる。

というかさっきから所在なさげにキョロキョロとしている。


「呼び捨てじゃマズイか?」


「ふつう王族を呼び捨てで呼んだら首飛ぶから!マズイとかの問題じゃないからね!」


「呼び捨てで構わない。こうして市囲の只中にいる間は私もただの一般人だからな」


「だってよ」


「…なんかもう頭痛くなってきた」


俺の顔を見てフィリスはそんな事を言ってきた。失礼な。


「んで、話がズレたがファルメは何が気になんだ?」


「いや、昨日は夜だったからバレなかったが、こんな明るい内に街に出たら流石に身元が割れてしまうのではないか?」


「あぁ、それなら大丈夫ですよ。ね、クレン」


そう言って此方に視線を移したフィリスに首肯してからファルメを見る。


「ま、問題ないわな」


俺は頷いてズボンのポケットからルーンをひとつ取り出して見せた。


「論より証拠だ。実際にやってみた方がファルメも納得すんだろ」










そして太陽が上りきった昼に、俺達三人は月兎の眠り姫から少し離れた商店の立ち並ぶ通りに居る。

「ま、まさか本当にバレていないとは……」


「そのルーンってそんな使い道もあったんだね」


「こういう、身を隠したりするときは重宝するんだよ」


ファルメの驚きとフィリスの感心の声に答えて俺は手の中のルーンを軽く放ってキャッチする。

今使用しているルーンは、Eolh(エオル)……そう、数ヶ月前にアークエネミーの攻撃を防いだ保護を意味するルーンだ。

基本的にルーンはその意味通りの効果しか使えない。Cen(火)のルーンなんかがその代表だ。

だが、そもそもの意味が抽象的というか大雑把なルーンは今回のように効果に幅が効く。

今使っている効果は単純に、『他人の視線から保護する』と言うもの。

まあ、言ってしまえば擬似的な透明人間になっているようなモノだ。

元々は隠密活動とか夜襲とかで重宝するルーンでもあるんだが、今回みたいな応用が効く。

これに加え、認識阻害の魔術を掛けてあるので、ルーンを見破られてもある程度は問題ない。


「さて、当面の問題も解決した事だし、のんびりぶらつくとしますか」


「おー!」


「お、お~…」


「ファルメ、無理に乗んなくていいんだぞ…」


律儀にフィリスのノリにのったファルメにそう諭す。

小さく手を挙げるのが妙に小動物みたいでギャップがあった。


「とりあえず、何処行くか」


「武器屋で」


「即答かよ」


花の乙女が街に出て行きたいところで答えるのが武器屋って……普通服屋とかだろ。


「この子の調子が少し悪いみたいだから見てもらおうかなって」


そう言ってフィリスは背中に提げた自身の弓を指す。


「成る程な。まあ、そういうことなら行かない理由は無いな。ファルメもそれで構わないか?」


「ああ、私は二人に着いていくよ」


俺の言葉にファルメは笑みを浮かべながら頷いた。どことなく、ワクワクしているようにも見える。


「そうと決まれば、早速行こう!」


「うん、楽しみだ」


「やれやれ…」


フィリスが元気よく笑いながら歩き出し、ファルメも楽しいのか笑みを浮かべそれに続く。

そんな元気な二人を見て苦笑いを浮かべてから俺も続いて並んで歩く。


さて、のんびり王都を満喫するとしますか。











そして自分が両手に花だと気付かないクレン……

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