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Act1・連携

「手伝いに来たって…お前」


「戦力にならなくても囮くらいにはなれるから」


文句をいう前に言葉を被せられ、言葉に詰まる。

フィリスの表情は普段の穏やかさは鳴りを潜め、真剣そのものだった。

こうなると何を言っても聞かない事は今日に至る日々の中で実感している。


「……丁度、人手が欲しかった所だ」


「了解、あっちも体勢を立て直したみたいだよ」


フィリスの声に倣って魔物の方を向くと、矢が貫通した前足の怪我が消え、威嚇の唸り声を上げながらこちらを睨み付けていた。


「面倒な攻撃持ってるから、気を付けろよ。俺でも避けるのが精一杯だったから」


ダーインスレイブを肩に担ぎ、隣に並んだフィリスに忠告する。

するとフィリスはクスリと笑い、弓を構えた。


「私の回避率、知ってるでしょ?」


「そうだったな」


その言葉に免じて、声が若干震えてる事は言わないでおこう。


「さぁて、第二ラウンドと洒落込もうか……!」


「■■■■■■■!!」


俺達が左右に駆け出すのと、魔物が突っ込んでくるのは同じタイミングだった。


「そういや、さっきの矢は何なんだ?光ってたけど、っと」


魔物の突撃を避けながら反対側に避けたフィリスに問う。

畜生、やっぱりコイツ速いな。


「私なりの魔法みたいなモノだと思って!」


魔物の向こうからそう返事が返ってくる。


「了解、ダメージは与えられたみたいだから、頼りにさせてもらう!」


フィリスにそう言い放ってから、魔物へとダーインスレイブを振るう。

兜割りに振るわれた魔剣は、強靭な毛に被われた皮膚を切り裂き、肉を断ち切る。

噴出する血は一滴残らずダーインスレイブが吸い摂るので、返り血は無い。


「■■■■■■!!」


痛みに吠えながら魔物が此方に向かって前足を振るってくる。

丸太の如く太い足が高速で振るわれる様は、常人が見れば恐怖に竦み上がりそうな勢いだ。


「Rad(車輪)」


だが、こちとらそんな物よりもっと恐いものを経験してんだ。ビビる事もない。

即座にルーンを使い魔物の背後に移動し、ダーインスレイブを叩き込む。



「■■■■■!?」



肉を斬った感触は有るものの、骨を斬るまでは至っていない。

切り裂かれた皮膚の内には僅かに傷ついた背骨が見える。


「ちっ」


剣に伝わる反動を生かして後退する。

直後、寸前まで俺が居たところを強く振るわれた尻尾が通過した。


「外も硬けりゃ中も硬いってか……」


自分で言ってなんだが、何だその不思議生態は。

魔剣の一撃受けて骨まで到達しないとか…あれか、細胞レベルでチートされてんのか。



「フィリス!」


壱祓(いちはらい)!」


掛け声を掛けると同時にフィリスが矢を射る。

輝きを纏った一本の矢は普段よりも勢いを増し、豪速の速さで魔物へと到達する。


「■■■!!?」


明らか一本の矢が鳴らす音ではないドスッ、という重い音を鳴らしてフィリスの放って矢は魔物に突き刺さった。



「続けて、弐震(にふるい)!」


さらに二本の矢が追加で放たれるが、その軌道があり得ない。


「■■■■■!!」


どうやったら同時に放った二本の矢が左右からカーブを描きながら対象に向かうんだよ…

二本の矢は寸分違わず魔物の前足と後ろ足に一本ずつ、柔らかそうな部位に刺さった。


「フィリス、そんな能力今まで無かったよな」            「何時も依頼の時はクレンのせいで特に出す機会に恵まれなかったからね!」


「俺のせいかよ!?」


何、俺は知らないだけで実はフィリスって凄い人だったのか?

フィリスが矢を放っている内にUr(力)とEh(駿馬)のルーンを再度発動する。

魔物の様子を見ると、肉体は再生しているものの、集中的にミョルニルやらダーインスレイブ等による大火力を叩き込んだおかげか、最初の時よりも反応が鈍い。


「押しきれるか…?」


手持ちのルーンは残りわずか。

内、補助用のUr(力)等のルーンは今使ったもので最後だ。

攻撃用ルーンはあと一つ。

フィリスの矢もあと少しすれば切れる。

決めるなら今しかない。


「一か八か、やってみるか……フィリス!」


覚悟を決め、弓矢による攻撃を続けるフィリスを呼ぶ。


「…何か策でもあるの!」



フィリスの声に俺は頷き返しながらミョルニルを解放する。


「今からソイツを上に『打ち上げる』!追撃出来るか!」


俺の言葉にフィリスは苦笑いを浮かべながらも頷いた。


「無茶な注文…でもやってみせるよ!」


「オーケー、んじゃ…」


体勢を低くし、両手に持った武器を地面と水平に構える。

擬似的なクラウチングスタートのポーズだ。

脚に力を込め、魔物を見据える。

こっから先は本当に運の勝負。当たれば勝ち、外れれば負ける。


だが、だからこそ……



「レディ……ゴー!」



やってみたくなるモノだ。


俺は音速の速さへと至りながら魔物へと駆け出した。



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