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YAYOI(上)  作者: 葉月 優奈
三話:初夏の思い出
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あの後、俺たちは洋服屋に来ていた。

姫子と俺の追いかけっこは終わり、結局俺が一発どつかれて目的の買い物へ。


日曜の朝、洋服屋は意外とすいていた。

そんな俺は、一人で試着ルームに入っていた。

試着ルームで、渡された服を着替えた。にしてもかなり大きいな、グレーのパーカーLサイズ。

普段Mサイズの俺にとって、かなりブカブカなパーカーを着させられていた。

後はズボンか。ズボン付属のベルトは、一番奥の穴で止まっていた。


「これでいいか?」


俺がカーテンを開いて前に出ると、そこには難しい顔の姫子と弥生がいた。

俺の姿を見るなり二人は頬杖ついて苦い顔を見せていた。


「う~ん、まだまだね。草薙さんどう?」

「先輩って、背は高いんでしょ」

「そうなのよ、やっぱりチビの勇太じゃ駄目ね」

「どうせ先輩は、背が高くて俺は低いよ~」


などと俺がいじけてカーテンを閉めようとしたとき、素早くカーテンの裾をつかんできた姫子。

その顔は、真剣そのものだ。


「あとさ、これを着て見て。勇太、お願いね」

「へいへい……」


そういいながら、青いシャツを受け取ってカーテンを再び閉めていた。

俺と弥生は、姫子の買い物につき合っていた。

姫子は大好きな野球部の先輩のプレゼントを探していた。


来年卒業して本土に行く、姫子憧れの先輩。

そんな先輩は、三年生だから来週の試合をもって引退。

引退するから、野球部で会うのも最後。でも姫子の方には、ほかにも理由があるらしいけれど。

そんな野球部マネージャーの姫子は、恋人の先輩に思い切って洋服のプレゼントをしようと考えていた。


「洋服って、高いな」値札を見て三千円のものもあってかなり高額。

正直中学生のおこづかいとしては驚いてしまう。

姫子はそんなに小遣い貰っていないだろうから、かなりがんばっているな。

それだけでも姫子の本気度が伺えた。


「勇太、まだ?早くして」試着室の先から聞こえる姫子の声。

姫子が俺に催促してきた。一応俺の数少ない友達でもある姫子の恋愛は、協力してあげたい。

姫子は俺の背中を押してくれたから。


「あ~、分かった」

着替えを終えて、俺がカーテンを開けると「ええっー、無いわよ」と姫子の不満な声。

弥生もじっと見て、「がっかりです」などと俺に浴びせかけた。


「なあ、先輩は俺なんかよりも体も大きいんだろ。だから……」

「男じゃなきゃできないでしょ。はい、今度はこれ。

草薙さん、ズボンもある?」

「うん」そういいながら、いつの間にか草薙も白いズボンを持っていた。

俺は苦笑いしながら店内の時計を見ると、この店に一時間以上いることに気づいた。

これが女子の長い買い物ってやつか。


「こ、これで最後だからな!」


などと捨て台詞を吐いて、俺はカーテンを荒っぽく閉めていた。

そんなくらい試着室は、姫子たちが持ってきた衣装であふれていた。


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