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あの後、俺たちは洋服屋に来ていた。
姫子と俺の追いかけっこは終わり、結局俺が一発どつかれて目的の買い物へ。
日曜の朝、洋服屋は意外とすいていた。
そんな俺は、一人で試着ルームに入っていた。
試着ルームで、渡された服を着替えた。にしてもかなり大きいな、グレーのパーカーLサイズ。
普段Mサイズの俺にとって、かなりブカブカなパーカーを着させられていた。
後はズボンか。ズボン付属のベルトは、一番奥の穴で止まっていた。
「これでいいか?」
俺がカーテンを開いて前に出ると、そこには難しい顔の姫子と弥生がいた。
俺の姿を見るなり二人は頬杖ついて苦い顔を見せていた。
「う~ん、まだまだね。草薙さんどう?」
「先輩って、背は高いんでしょ」
「そうなのよ、やっぱりチビの勇太じゃ駄目ね」
「どうせ先輩は、背が高くて俺は低いよ~」
などと俺がいじけてカーテンを閉めようとしたとき、素早くカーテンの裾をつかんできた姫子。
その顔は、真剣そのものだ。
「あとさ、これを着て見て。勇太、お願いね」
「へいへい……」
そういいながら、青いシャツを受け取ってカーテンを再び閉めていた。
俺と弥生は、姫子の買い物につき合っていた。
姫子は大好きな野球部の先輩のプレゼントを探していた。
来年卒業して本土に行く、姫子憧れの先輩。
そんな先輩は、三年生だから来週の試合をもって引退。
引退するから、野球部で会うのも最後。でも姫子の方には、ほかにも理由があるらしいけれど。
そんな野球部マネージャーの姫子は、恋人の先輩に思い切って洋服のプレゼントをしようと考えていた。
「洋服って、高いな」値札を見て三千円のものもあってかなり高額。
正直中学生のおこづかいとしては驚いてしまう。
姫子はそんなに小遣い貰っていないだろうから、かなりがんばっているな。
それだけでも姫子の本気度が伺えた。
「勇太、まだ?早くして」試着室の先から聞こえる姫子の声。
姫子が俺に催促してきた。一応俺の数少ない友達でもある姫子の恋愛は、協力してあげたい。
姫子は俺の背中を押してくれたから。
「あ~、分かった」
着替えを終えて、俺がカーテンを開けると「ええっー、無いわよ」と姫子の不満な声。
弥生もじっと見て、「がっかりです」などと俺に浴びせかけた。
「なあ、先輩は俺なんかよりも体も大きいんだろ。だから……」
「男じゃなきゃできないでしょ。はい、今度はこれ。
草薙さん、ズボンもある?」
「うん」そういいながら、いつの間にか草薙も白いズボンを持っていた。
俺は苦笑いしながら店内の時計を見ると、この店に一時間以上いることに気づいた。
これが女子の長い買い物ってやつか。
「こ、これで最後だからな!」
などと捨て台詞を吐いて、俺はカーテンを荒っぽく閉めていた。
そんなくらい試着室は、姫子たちが持ってきた衣装であふれていた。




