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YAYOI(上)  作者: 葉月 優奈
三話:初夏の思い出
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俺は怒っていた。

朝の教室に、まだ先生は来ていない。

だからこそ話に花を咲かす生徒たち、和やかな教室。

でも、俺と姫子は険悪なムードに変わっていた。

そして、その険悪ムードは瞬く間に周りの視線をひきつけてしまう。


「あのさ、姫子。お前は何がしたいんだ?」

「勇太、超鈍感!」


俺と姫子はほぼ同時に叫んだ。

眉をひそめて姫子の顔を俺は見ていた、姫子も目を逸らさない。


「鈍感?何を言っているんだよ!」

「ああっ、もう。あんたは、何もわかっていない!

これも、勇太あなたのためでもあるのよ!一体、何年姫子様の下僕をやっているのよ!」

「わけ分からねえ。てか、俺は下僕じゃねえし」

「とにかく、草薙さんも連れてきなさい。

日曜日の朝、いつもの公園で待っているわ!」


最後は、捨て台詞のようなことを言った姫子は、そのまま肩を怒らせて離れて行った。

俺は、苦々しい顔で姫子の背中を見ていた。


「なんだよ、アイツ」


悪態をついて、俺は前を向く弥生の方を見ていた。

それでも弥生は、ずっと前を向いていた。

反対するわけでも、否定するわけでもない、いつも通りの弥生。


「弥生、ごめんな。姫子が変なことを言って」

「ううん、大丈夫」


前を向いた弥生は、俺の方を向いてきた。

いつもながらに無表情で、弥生は机の上に教科書を取り出していた。


「でも、俺はともかく弥生を連れて来いって、姫子はおかしいよな」

「そうかしら?」


意外にも弥生は、俺の顔を不思議な目で見ていた。

俺はあれっ、となんか拍子抜けをしていた。


「な、なんだよ?」

「意外と、勇太って鈍感なのね」

「ど、鈍感って」


俺が、困った顔で言ったときに弥生はもの欲しそうな顔で俺を見ていた。

長い髪を指でくるくるいじり、俺の言葉を待っている。俺は口元をムズムズさせていた。

弥生の上目遣いは、いつもドキドキさせる。


「弥生……」

「ねえ、私を誘ってくれるの?明日の買い物」

「う、う~、弥生が嫌じゃなければ……」

「わかった」


か細い声で、弥生は俺の誘いに素直に乗ってくれた。

俺に対して弥生は、ちょっとだけうれしそうな顔を見せて、すぐに鉄仮面のような表情に戻した。


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