触れようとしない勇気
掲載日:2026/05/23
家の窓辺のソファーに座って、久しぶりに僕は夜空を眺めていた。
蜜のような満月と
またたく一等星と
澄んだ藍色の空。
どれも美しいけど
とても遠くにあって
ひとつも触れられない。
「だからこそ、美しく感じるんじゃないかな」
不意に、昔、憧れていた人の言葉を思い出した。
その人は、アポロ11号が月面着陸した時の映像を僕に見せて、こうも言っていた。
「月は遠くから見ている分には美しいけど、住んだらきっと地球よりも酷いと思うの。でこぼこで何もないしね」
こんなにも明快でハッとさせられることがあるのかと、驚いたのを覚えている。
触れられなくても、生きればいい。
遠かろうと、近かろうと、この世界のどこかで、一緒に生きていればいいと、今はそう思う。




