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第五話 私の異能(ギフト)

戦地見学に行くと、いきなり任務を告げられて、その任務の最中とある馬鹿ニックのおかげで右手を吹き飛ばすことになった私。爆発の衝撃でうまく頭の回らない中、私の目は右手の"再生"といった驚くべき事象を"観測"する。無事ローラン少佐のもとへ戻った後、休む暇なくその事象についてのレポートに追われる羽目になり、今日やっとレポートを少佐宛に送るとこができたのだ。

帝国暦五十年十二月二十五日

前この日記を書いてから、レポートの提出に追われたりして、ずいぶん時間がすぎてしまいました。無事? この日記を書き続けることができて嬉しいです。任務に関することは、口外禁止なので、念の為この日記にも記さないでおこうと思います。そもそもこの日記がお父さんとお母さんの手に渡るかもわからないんだけど…今軍学校は一面の雪景色です。もしかしたらそっちにも雪が積もってるかもしれませんね。残念ながら私には知る由もないんだけど。どうやらこの国は、新たに西方の国と戦争をするらしいです。

「その為に極東の国と同盟を結ぶのだ」

とそう先生がおっしゃってました。幸い村の近くまで前線が後退することは無さそうですが、どうか用心して下さい。


極東の国は私の様な不思議な力を持った一族が二千年も前から国を代々統治してるんだって、すごいよね? 帝国はどうしてそういう人が統治してないんだろう? 大きくなったらその国に行ってみたいな。

最近学校では、理科と算数ばっかり勉強してるよ。何故か歴史の授業は無くなっちゃうんだって。高校ってつまんない。でもね、卒業できたら軍隊配属前の一週間は帰ることができるんだって! 楽しみだなぁ。お父さん、お母さん、私がんばるね!

また明日!


時計の針は十時をさしていた。子供は寝る時間である。あの任務からぼんやりとした不安感に駆られ、寝つきが良くない。それは私の異能から来るものなのだが…

私の異能"観測"は右目を対価として得たものにしては強すぎるのである。一見すると"視界に入る範囲の事象を理解する"といった面白みにかけるものであるが、意識さえすれば、その精度が分子レベルの大きさまでにも及ぶという人から外れた能力である。その上任務の時に発現した異能便宜上レポートでは"再生"としているが、私の目から得た情報だとそれは、再生とは似て非なる"生成"と言える代物であった。"無から物体を生成する"それは、科学の範疇から大きく外れたものであるし、もはや人のなす技ではない。人から外れた能力を持つものといえば"ほとんど玉無し"ニックがいるが、彼はそれ相応の対価を払っている、彼の片方のソレには将来への命が沢山詰まっていると考えれば…その刹那、私の脳裏に覆い被さっていた不安感が姿を表した。それは、私が女であるという自覚からなる盲点であった。私にも命を授かる部位があるではないか、そう考えると辻褄が合うように思えるが、その考えも杞憂に終わる。

「自分の身体を観測すれば良いではないか。」

なぜもっと早くそれに気づかなかったのだろか、義眼を付け替え自分の下腹部を見る。それらしい臓器は、欠損していない様だった。すると謎は夜とともに深まるばかりであった。私は自らの異能の対価について考察するのをやめた。

翌日から私は秘密裏に新たな異能"生成"についての特訓を行うことにした。任務中では無意識下での肉体の再生と同時に脳内にドーパミンやオピオイドといった神経伝達物質のうないまやくを生成するという離れ技をこなしていたわけだが、いざ意識的にそれをやるとなるとうまくいかない。流石に腕を落とすわけにはいかないので、指先の治癒から始めることにした。ナイフで指先を軽く切り、意識を負傷部位へと集中させる。段々と体組織が盛り上がり、治癒していく。一応成功はしたが、かかった時間はおよそ一時間、遅い。この早さだと戦場では命取りになる。そういった治癒訓練と並行して、空間に物体を生成するという訓練も始めた、これに関しては全くもって未知の領域である。まずは手始めにメタンの生成から始めた。成功しているか否かは私の"目"を通して判断できるし気体であるから成功しても誰にもわからないので都合がよかった。

その間学校では、理論化学や力学の分野は修了し、有機化学や原子、人体といった私の異能におあつらえ向きな分野へと突入していた。

「ミーア大丈夫? 最近疲れてるように見えるけど?」

ユリーシャが心配そうな表情で私の顔を覗き込む。

「平気だよユリーシャ、ただ最近ちょっと眠れてないだけ。そっちこそ耳の調子はどう?」

訓練のことはもちろん言えないというか、たとえ秘匿する必要がなかったとしても

「自分の指を切って再生させる実験をしてて疲れてる」

と言うと余計な心配をさせることになるので適当な理由ではぐらかす。

「早く寝ないと大きくなれないよミーア。耳の調子はね、だいぶ良くなったみたい。ねぇミーア? 最近の科学なんだけどね、私には難しくて、今度教えてくれない?」

任務の時とは打って変わって、平穏な時間が流れ出す。

時は移ろい学年が変わる頃、私の異能は成長期を迎えていた。有機化学を履修し、高分子についての知識をつけた後、異能に応用するようになってから爆発的な早さで、化合物を生成することができるようになり、10mol程度であればものの数分で生成できるようになったが、それと同時にある疑問が浮かんできた。

"これらの物質を再生するエネルギーは一体どこから出てきているのだろうか?"

無から物質を再生するとなると、膨大な(エネルギー)が必要になることは明白である。物質を生成すると少し疲れるが、人一人のエネルギーではとうてい満たすことのできない規模のエネルギーである。私は何かを"見"落としているのだろうか?

傷の再生においては部位が繋がった状態であれば数秒で、指を切り落としたとしても一分もかからず再生できるようになっていた。切り落とした指の処理が大変ではあったが…ここまでして再生能力の向上に励んだのはある理由があった。新たに身体の一部を欠損することによって私が新たに異能を得ることはないということが任務の一件で明らかになったが、"生まれつき欠損していた右目を再生、いや、生成させると目に関する異能はどうなってしまうのか?" という疑問を持ったからである。どうなるかはわからないので実践するのはもう少し再生能力が向上してからにしようと思っている。

こうして私はあらゆる事象を観測し、万物を生成することができて、その上あらゆる傷を治癒してしまうといった人の形をした"なにか"と成った。

「私は何になろうとしているのだろうか?」

「そもそもこの世界において人の定義とはなんなんだろうか? 」

「私を人たらしめるものとは何だろうか?」

今後私はその様な疑問を抱き続けることになる。少なくともこの時点で私を人だと証明できるのは、両親だけであった。

「あぁ、お家にかえりたいなぁ。」


おまけ『極東の国 宮之国ナパージュ

東の果てにあるというナパージュとデクナ帝国が手を結ぶことになった。これからする話は、興味を持った私が聞いた、ナパージュについてのお話。


ナパージュはデグナ帝国がある大陸の東の海に浮かぶ島国であり、異能を持つ一族が支配する国である。そのためか、異能を持たない者が統治する国との接触を拒み、独特な言語を持つため世界各国から存在を認知されてはいたが、国の概要はわからずじまいであった。

ところが、十年ほど前に帝国が異能者だけで構成された使節を送ると、快く受け入れられ、我が帝国と国交を成立させるまでに至った。周囲の国と隔絶されていたとはいえ、何らかのルートで情報は得ていたらしく、帝国についての情報も渡っており、想像に反し妙に近代的な政治体系を持った国であるとされている。

この国を統治する一族の異能は特殊で、対価となる部位が異形に変化するといったものであった。ナパージュで異能は神がかりと呼ばれ、畏敬の対象であった。血筋で変化する部位が決まっており、皇族以外が異形になることは無いとされ、目、耳、尾?といった部位が変化するとされている。それぞれの部位が変化しやすい血筋を持つ一族を御三家といい、数年に一度そのすべての特徴を併せ持つ子供がその御三家のいづれかから生まれ、その子供が国の統治者として跡をつぐらしい。そうでない御三家の子供は各地に散らばる社へと預けられ、その社の管理人兼神体といったような役職を継ぎ、その地域の者たちから崇め奉られるそうだ。

ナパージュでは支配者のことを宮様と呼び、神として崇められている。そのためか、決して表に顔を出さず、我が帝国の使節もその姿を見ることがなかった。

現地の文献によると宮様の容姿は四つの目と毛の生えた長い耳、そして九つの尾を有しているのだとか。持っている異能の詳細も不明で、現地の人に聞いても答えてくれなかったそうだ。


そのような国と帝国は技術提供をする代わりに、軍事的同盟を結ぶこととなったのだ。

ミーアが獲得した称号

優れた研究者

小学校中退高校生

高校一の優等生

ミギー!!

もう人ではない。

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