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第一話 デグナ帝国立第一帝国軍学校より愛を込めて

こうして私は、まだ寒さが残る季節に第一帝国軍学校に入学したのだ。この学校は大きく分けて三つの学科を有しており、参謀や上級将官の育成を目的とした士官学科と生徒は皆"見習いの志願兵"といった扱いを受ける兵学科、そして最近になって新設された、異能の利用可能性を探り個々の特性を伸ばすことを目的とした異能研究学科である。

士官学科には入学試験があり、幼少期から教育を受けることのできる家柄の人間が多い。兵学科はある一定の体格の条件を満たした人間が入ることができ、志願兵という扱いのため国からの給与が出る。その為か地方の裕福でない家の子供が多い。異能研究学科には調査師の推薦によってのみ入ることができ、異能の発現にはある一定の規則性があるため、私のように先天的に発現していた者や、後天的に発現した者が混ざっている。もちろん年齢による配慮はなされるが、生徒数が少ないため、一クラスで3〜4歳年の差があることもざらである。

そんな学舎で私の学校生活は幕を開けた。軍学校といっても基本的には、そこらへんの小学校となんら変わりは無い、大きな変化といえば体育が異能訓練に変わっていたり、本来なら学校が終わる時間に異能に関してわかっていることを学んだりする程度である。この様な授業形態であるがために、クラス分けは、発現した異能に基づいて分けられる。


「はい今日は、異能について学びましょう。この三等科のクラスを担当するハインリヒ・ヴィルヘルム・エンルストです。どうぞ宜しく。ヴィル先生って呼んでね。」

この陽気な男、見覚えのある顔立ちである。

「私は以前調査師をしていたので、私が推薦書を書いた生徒もいるかもしれませんね。そう! ミーアさん! あなたみたいに」

周りの視線が痛い。

この男はこの時間中ずっとこの調子であったので、授業の内容を要約すると、異能の発現には条件があり、身体の一部が欠損していることを前提として、遺伝的要因によって発現するかしないかが決定するらしい、彼の言葉を借りると"神によって選ばれる"のだとか、要するに、

「怪我をしたらスーパーマンになっちゃった!」

という事象はあるにはあるが、帝国の調査体制が確立した今日では確率的に起こり得ない事らしい。また、発現した異能には等級分けがなされており、私のような欠損した部位の機能を補う程度の異能を三等として、足が欠損した結果、身体全体の大幅強化がなされるといった欠損した部位の働き以上の性能をもつ異能を二等、肝臓が欠損した結果、肝機能を補正するだけで無くあらゆる毒への耐性を持つなど、人並み外れた能力を有する異能を一等としている。この発現する力の強さにも遺伝的要因が関与しているらしく、この学科はその統計を取るために存在している様なものらしい。さて、ここまで説明するとある疑問点が浮かび上がる。

「なぜこの異能研究学科は新設であるのか?」

という問いだ。遺伝的要因が絡むにしろ、条件はそこまで厳しく無いのに、異能保持者の数が少なく、今日に至るまで日の目を浴びることがなかったのである。これにはこの国の歴史が関係している。太古には、私のような異能者が、今よりも多く居たのだが、ある国の支配者が、その様な者たちの反乱を恐れ、異能を持たない民衆の恐怖を煽り、大規模な異能者狩りを行った。

「異能者は私たちの様な持たざる者を蹂躙しようとしているらしい。」

「異能者どもは国家の転覆を狙ってるらしいぜ。」

そんな噂が他国にも伝播した結果、各地で異能者狩りが行われ、異能者の数は極端に減ったそうだ。その当時異能者を匿っていた地域があり、その地域に異能者や、多くの異能者の疑いをかけられた人間が集まり、その結果できた国がこのデグナ帝国である。このような成り立ちの国であるため、周辺国との摩擦が大きく常に戦争状態である。最近になって異能者の数も増え始め、周辺国との情勢も鑑みた結果、この異能研究学科が新設されたのだった。故に異能の研究は、他国ではあまり行われておらず、この学校自体が国家機密であるため、故郷へ手紙を送ることも、故郷から手紙が来ることも無いのだ。

「お母さん、お父さんどうしてるかな…」

一人窓に向かって呟く、

「なあ? おまえ、ヴィル先生としりあいなのか?」

驚き振り返ると、年が一つか二つ離れているような風貌の背の高い男が立っていた。

「私ミーア、先生の推薦で私この学校に入ったの。」

「ふーん、俺デンケル、俺も先生の推薦で入ったんだぜ。まぁ同じ三等科同士仲良くしような。よろしく!」

「よろしくね。」

言い切った時に彼の姿はなかった。

「あの人はどんな異能を持っているのかしら?」

それを知るのは翌日のことであった。


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