私たちの猶予期間は、もう少しだけ続く。
文化祭は無事に幕を下ろした。
妹はあれから『魔力なし』となり、半年の更生期間を経て公立学校で学ぶことになった。
いつか魔力を返還することもあるらしいのだけどーー本人には、反省するまで伝えないらしい。
私は妹にもいつか幸せになって欲しいと思う。
慌てても何もうまくいかない。一歩一歩、毎日努力を積み重ねていくのが一番近道で自信につながるって、いつか気づいてくれたらいいな。
気づかなくても、せめて……自分らしく、前向きに生きられるようになってほしい。
他人に振り回されるのではなくて。
ちなみにあの日、私の妹が起こした事件については誰も話題に出していない。
ーー不思議なくらいに、誰も知らないのだ。
「なんで妹の事件こと、誰も知らないんですかね〜」
「なんだろうね〜」
「店長さん、何か知ってるんじゃないですか?」
「さあね〜」
店長さんは口笛を吹いてしらばっくれる。
この人ほんと、何者なんだろう。
というわけで。
文化祭のハレの期間は終わり、再び日常が戻ってきた。
私は今日も、いつものようにカフェテリアでバイトをしていた。
床の掃除はリスの姿を模したスライムちゃんが自動で掃除をしてくれている。ほっぺをもごもごとさせて、お客さんたちの目を和ませている。
奥の四名掛けのテーブル席では、カシスとマオ、そしてアンジャベルさんとノヴァリスさんが集まって、次の自由課題の打ち合わせをしていた。四人はなんだかんだよくつるむ関係になっている。
「おーい! フェリシアもバイト終わったらこっちにいらっしゃいな!」
「ま、待ってるからな! 慌てなくていいからな」
「アンジャベル、顔が真っ赤だ。熱があるのか?」
「ノヴァリスほんっとひとこと多いな……!」
私はくすくすと笑って、モップがけに邁進する。
バイトの時間が終わってタイムカードを押して、着替えて出てきた私を待っていたのは。
「お疲れ様」
「カイ!」
長い銀髪をゆらし、カイ・コーデリック公爵令嬢が片手を小さく上げてこちらへやってきた。
本当に綺麗な人だ。男の人だとわかった後でも、本当に綺麗だと思う。
「髪の毛、口に入ってるよ」
カイが私の頬に触れる。髪を整えてくれてドキッとする。
最近、二人っきりの時は時々元の口調で話してくれるようになった。
そうすると不思議なほど「カイ殿下」の空気が滲んできてーーー私は照れてしまう。
私の態度を見て、カイがクスッと笑った。
「ごめんね。女の子の距離感で触れたら悪いよね」
「い、いいの! だってカイは特別だから!」
「……そう」
「おーい! カイ、フェリシア! 早くこっちに来い!」
アンジャベルさんの呼ぶ声がする。
みんなが私たちを待っている。
「行きましょう、フェリシア」
「うん!」
私たちは自然と手をつなぐ。
そして早足で、カフェテリアの奥まで歩いていく。
私はカイ・コーデリックと親友を続けている。
けれど彼の秘密を知っているのは私だけ。
ーー私たちはそれからも、元気に過ごしていく。
どんなことが起きても、私はカイの隣にいたいから。
ここでフェリシアとカイの物語は一旦完結とさせていただきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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