表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むすかり  作者: やきぶたたまこめし
7/30

涙色の視界

次の日。

一華は、私が「おはよう」と言い終わる前に、

「どうだった?」と聞いてきた。

楽しみで仕方ない、と言ったような一華の顔。

「ごめん。私…、行けない。」

「…何で…。」

さっきとは人が変わったように、だんだん低くなっていく一華の声。

「私…、人混みが、苦手で…。」

楽しみにしていた一華の顔が脳裏に浮かんで、何度も心の中で謝った。

「大丈夫。」

一華が、そう言った。

「大丈夫だよ、私と一緒だから…。一人じゃないでしょ。」

そう言って、あったかい笑顔で笑ってくれた。

だから、

一華となら行ける気がして、「うん。」と、返事をしていたんだ。



その日は、朝からじめじめしていた。

まるで、私の気持ちに比例するみたいに。

細くて冷たい、小雨が降っていた。

私は玄関の傘置き場から、折り畳み傘を引っ張り出すと、玄関のドアをゆっくりと開けた。

「奈穂ー!」

「あっ、一華!」

一華は、いつもよりおしゃれな服を着ていた。柑子色のセーターに、茶色いチェックのミニスカート。私が持ってないようなのばかりで、少しだけ羨ましかった。

「おはよう!奈穂!」

「…おはよう。」

声が震えていた。

昨日の夜からずっと考えていた。

もし、同級生に会ってしまったら…。

―何で学校も行かずにこんなところに遊びに来てるんだろ。

―ずるいよね。逃げ出したくせに。

―私たちは毎日、必死に勉強して、努力してるのに。

私は、逃げた。逃げ出した。

努力することから逃げて、楽なほうへと、逃げ出した。

私が一番ずるいことなんて、分かっている。

「行こう!」

一華が歩き出した。

私も歩き出した。

でも、前を見つめた視界は、ぼやけていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 詩的でいいですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ