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むすかり  作者: やきぶたたまこめし
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灰色の記憶


小学生の頃、いじめられていた。

物を隠された。壊された。仲間外れにされた。

―たいしたことないね。お姉さんはあんなにすごいのに。

―偉そうなんだよ。あいつ。

そんなことばかり言われた。

学校が、嫌いだった。

大嫌いだった。

でも、誰にも言えなかった。

心配を、かけたくなかったのかな―?

日に日に増していく恐怖も、悲しさも、虚しさも、

全部、胸の奥にしまい込んだ。

辛くて、辛くて、毎日明日が来ることに、怯えていた。

でも―、助けてくれた。

歌が―

『大丈夫、何も悪くない』『生きてるだけでいい』

そんな言葉を聞くたびに、抱えきれないくらいの涙が溢れてきて、

いつの間にか、眠っていた。


歌が、大好きだった。

歌うことが、勇気をくれた。

私も、誰かを歌で幸せにしたい、と思った。

でも―


歌えなくなった。

だんだん、歌うと息が苦しくなるようになった。

『喘息』だった。

私が言わずに黙っていると、母がそれに気づき、医師に相談した。

「もう、歌うな」そう、言われた。

目の前が、薄く暗くなっていくのが分かった。


歌手になることが夢だった。

その言葉はもう、『過去形』だ。



「ねえ奈穂!」

突然一華に話しかけられて、私は我に返った。

「あ、うん、何?」

「奈穂はさ、何で学校に行けなくなったの?」

一華の質問に、全身に鳥肌が立っていくのが分かった。

「え…。」

「一応、聞いておいたほうがいいじゃん!」

そう、ニコニコ笑顔で聞いてくる一華に、焦っていく。

応えなきゃ…。

「あぁ、嘘は…、つかないでね!」

「あ、あの、ね…。私、生まれつき、喘息を持ってて…、それが、中学に入って、悪化して…、行けなくなったの。」

嘘じゃないし、大丈夫だよね…。

私は不安を拭いきれずに、一華の返事を待った。

「へえー、そっか大変だね!」

「う、うん。」

「で、さ、急に話が変わるんだけどね。二人で、ショッピングモール行かない?」

話の変わり方が急すぎて、奈穂はついて行けなかった。

「私、買いたいものがあって。でも、一人で行く勇気ないから、奈穂と一緒に行けたらなぁ、と思って。」

「ぁ……。」

「ねえ奈穂、だめ?」

友達がいなかったから、友達と二人で遊ぶ、なんて初めてだった。

でも―、どうしても、行けなかった。

「あ、あの…。また、予定確認してからでもいい、かな…?」

曖昧な返事をした。

「うん!」

満面の笑みで笑う一華を見ていると、断ることが、怖くなってきた。

私はずっと、そういう場所を遠ざけてきた。

同級生に会うのが、怖かった。

だから、今回も、諦めよう。

そう、思っていた。






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