一華と私
朝になると、アラームが鳴る前に目が覚めた。
前は、朝が、「今日」が嫌で仕方なかった。なのに今日は、景色が前よりもすごく明るく見えて、ウキウキと胸が踊りだしそうだった。
私は、秋のひんやりとした空気の中で、走り出すように歩き始めた。
「奈穂!おッはよー!」
フリースクールに着くと、一華ちゃんの愛想のいい笑顔をした一華ちゃんが待ってくれていた。
「おはよう!一華ちゃん!」
「違うでしょ。」
突然そんなことを言われて、何か気に障ることを言ってしまったのか、とヒヤッとした。
「え…?」
「昨日、呼び捨てで呼ぶって決めたでしょ!」
ムッとしたような顔をする一華。
「ごめんね。い、一華。」
「うん!許す!」
満足そうにそういう一華に、少し安堵した。
初めて友達を呼び捨てで呼んで、少し恥ずかしかったけど、すごく嬉しかった。
そう言えば―
昨日の帰り道にふと思った。
私と一華って、もう友達なのかな…?
私は誰かと友達になった経験がなかったから、『友達』なのか、すごく不安だった。
自信を、持てなかった。
「あのさ、一華。」
「うん?」
「私たち、って…、『友達』なの…?」
怖かった。
もし、友達でないと言われたら―
「何言ってんの。」
私はどうすれば、いいのだろうか―?
「友達に、決まってるでしょ!」
笑顔が見えた。
一華の優しい、笑顔が見えた。
風は、私の知らないどこかからやってきて、木の葉を揺らす。
「私、絵を描くのが好きなのっ!」
小さな木がたくさん生える小さな中庭で、私たちは絵を描いていた。
渡辺先生が、二人で遊ぶならちょうどいいと、教えてくれた。
私たちだけの空間。
「奈穂は、何が好き?」
一華が手を止めてこっちを向いた。
―歌を、歌うこと。
「ん~…、何でも好きだよ!」
嘘をついた。
「私ね、漫画家になることが、夢なんだっ!」
「へえー。すごいねっ!」
「うん。ありがと!」
「私、一華の夢、応援するから!」
「うん!」




