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むすかり  作者: やきぶたたまこめし
3/30

姉と私


フリースクールは、意外と小さな建物だった。

水色の壁に緑の屋根という、おしゃれな外見で、植物がきれいに植えてあった。

中庭があるようで、子供たちの無邪気な笑い声が聞こえた。

まるでアリスの国に迷い込んでみたいで、ここで過ごしてみたいな、と思った。

「こんにちは。藤本奈穂さん。」

後ろから声がして振り返ると、笑顔の素敵な女の人が立っていた。

短い髪を後ろで束ねていて、ふんわりとした雰囲気の人。

「こ、こんにちは。」

「私、渡辺かおりっていうの。よろしくね。」

「は、はい。よろしくお願いします。」

そう言ってぎこちなく笑って見せると、渡辺先生も笑ってくれた。

中は木の匂いがして、新築の家に入ったみたいだった。

学校よりも狭いけど、とてもい心地のいい場所だと思った。

廊下を進んで行くと、小さな教室があった。

その中に数人生徒がいて、みんな制服ではなく、私服だった。

正直不登校の子がこんなにいることに少し驚いた。

男女合わせて、15人くらいかな?

休み時間のようで、カードゲームをしていたり、お喋りをしていたり、部屋の中を走り回っていたり…。

いろんな子がいた。

学校みたいだった。

でも―、学校じゃなかった。

教室をまじまじと見つめていた時、窓際に座る女の子と目が合った。

女の子は、私に向かって白い歯を見せてにっこりと笑った。

なんとなく、ぎこちない笑顔で笑い返してみた。

すると女の子が手を振った。

私に向かって。

嬉しかった。

私も手を振り返してみた。

「じゃあ、次、行こうか。」

渡辺先生の声と共に、母も歩き出した。

「奈穂、行くよ。」

母にポンと肩をたたかれ、私も後ろを気にしながら、歩き出した。

フリースクールの中庭には、すみれ色の花が咲いていた。



私には姉がいる。

姉は、すごく優秀な子だった。

頭がよくて、信頼されていて、友達がたくさんいて。

私から見たら、悪いところなんて、一つもなかった。

小さい頃に聞いた。


「里紗ちゃんは100万人に一人の子ね。なんでも才能があって、将来が楽しみだわ。

それに比べて奈穂ちゃんは―、なんていうか、おっちょこちょいで、マイペースで…、めんどうのかかる子ね。」


小学校の先生が母に話していた。


「里紗ちゃんは、努力しないでも何でもできる子。

奈穂ちゃんは、努力したら何でもできる子ですね。」


「努力したら何でもできる」それは言い換えれば、

「努力しなきゃ何もできない」

私はそういう人だ。


姉は何でも持っていた。

友達も、信頼も、才能も。

私は里紗ちゃんの妹だからと、期待されるだけで、何もできなかった。

おまけに体が弱かったから、本当に何も、出来なかった。

姉みたいになりたかった。

姉に、なりたかった。

姉に、ならなければならなかった―


だから、努力することにした。

小学校5年生くらいからかな…?

姉に近づくために、必死に勉強して、姉と同じ中学校を受験した。

けど―。

努力して合格したって、何にも実るものなんてなかった。

一つだけあったとしたら―、

あいつらと、同じ中学校じゃなかったこと、くらいかな…?

惨めだ。

私は―、生きる価値もないような人間になってしまった。


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