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むすかり  作者: やきぶたたまこめし
27/30

目を覚まさない一華


7、



1週間続いた雨が上がって、太陽が朝を知らせるように街を照らしていた。

雨でじめじめとした地面は、濡れているところと乾いているところで色が分かれており、まだ雫が残る木や花たちは、太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。

「チュンチュンチュン…」

春を告げるような小鳥の鳴き声で、私はようやく目を覚ました。

「ぁ……」

目を開けると、真っ白なベットの上に横たわっていて、ほのかに香る薬の匂いに懐かしさを覚えた。

「っ…!」

少し動いただけで、体中に走るズキズキとした痛み。

泥まみれだった制服はいつの間にかベットの横のハンガーにかけられていて、私は白に小さく水色を合わせたような色の入院服を着ていた。

ふと、自分の腕につけられた点滴を見た。

「はっ!一華っ!」

一華のことを思い出して、自分の横に目を向ける。

隣のベットには、一華が横たわっていた。

静かに眠る一華が、まるで永遠の眠りについたようで、不安な気持ちが渦巻いていく。

悲しそうに目を瞑る整った顔に、青白くなった肌の色。

あの時のことを思い出すと、まだ少し、胸が痛くなる。

「ガラガラガラ…」

病室のドアが開いて、看護師さんが入ってきた。

「あ!奈穂さん!目を覚ましたんですね!」

嬉しそうに安心したように、こちらに笑いかけてくる。

看護師さんは中年のおばさん、と言った感じで、その顔に張り付いている愛想のいい笑顔がよく似合っていた。

「奈穂さん、1週間も眠っていらしたんですよ。」

そう、点滴を確認しながら話す看護師さんに、一番気になっていたことをぶつけてみた。

「あ、あの…、私たち…、何で、ここにいるんですか…?」

私たち…、何で、生きてるんですか…?」

あんな高さの崖から飛び降りて、無事なはずがない。

海に飛び込む数秒間で、私は死を覚悟していた。

全部自分で決めて、やったことだ。

死ぬことなんて、承知の上だ。

ましてやあそこにはほとんど人が来ないから、発見されるのも難しかったはずだ。

「あぁ、あの、一華さんのお母様が、お二人が飛び込んでいくのを見ていらしたようで、ずぶ濡れで二人を救急車まで運んでくださったんです。それで何とか、助かったんです。」

一華の、お母さん。

手紙をくれた人。

もしかしたら、一緒に一華のことを探してれていたのかもしれない。

わざわざあんな手紙まで書いてくださったのに、私、何の役にも立てなかった。

ごめんなさい、一華のお母さん。

一華を、止めることが出来なくて―


私は未だ目を覚まさない一華を見つめ、悲しげに呟いた。

「早く、目を、覚まして…。」

そして、優しげに輝く春色の太陽を見つめた。




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