走り出す―
❀❀
「ハアハア…」
雨の打ち付ける山道を、ただひたすら登っていく。
雨にあたって、雫の重さに耐えきれなくなり飛び跳ねる葉っぱたち。
笑っているよう悲しく揺れる葉っぱたちは、まるで泣いているみたいだった。
一華が最後に行くならここしかない、と思った。
一番大切な、思い出の場所。
もしかしたら、ここにはいないかもしれない。
でも私は、今にも折れてしまいそうなほどに疲れ切った足を、止めることが出来なかった。
雨か汗のせいか、どんどん霞みがかっていく目の前を、制服の裾で拭った。
急な斜面には、たくさんのしょんぼりとした花たちが、寂しそうにこっちを見ている。
「ハアハア…」
どんどんと鉛のように重たくなっていく足を、何とか前に出して進んでいった。
器官の奥に何かが挟まったように息が出来なくなっていく。どうやら喘息の発作が出始めたようだ。呼吸がしづらくて、息苦しい。
それでも私は、足を止めなかった。
雨に濡れた苔だらけの足元はぬめり気があって滑りやすかった。
「ガタンッ!ドシャッ!」
傍にあった石に躓いて、泥の中に顔からこけてしまった。
「っ…!」
それでも立ち上がって、ひたすら前に前に、登っていく。
さっきこけて傷の出来た膝からは、泥の混じった赤黒い血が噴き出ていた。
泥と雨に濡れた紺色の制服に、涙か雨か、分からないものが零れ落ちていく。
それでも前へ、前へ―
一華の元に行くために、
走った―




