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むすかり  作者: やきぶたたまこめし
25/30

走り出す―



     ❀❀



「ハアハア…」

雨の打ち付ける山道を、ただひたすら登っていく。

雨にあたって、雫の重さに耐えきれなくなり飛び跳ねる葉っぱたち。

笑っているよう悲しく揺れる葉っぱたちは、まるで泣いているみたいだった。

一華が最後に行くならここしかない、と思った。

一番大切な、思い出の場所。

もしかしたら、ここにはいないかもしれない。

でも私は、今にも折れてしまいそうなほどに疲れ切った足を、止めることが出来なかった。

雨か汗のせいか、どんどん霞みがかっていく目の前を、制服の裾で拭った。

急な斜面には、たくさんのしょんぼりとした花たちが、寂しそうにこっちを見ている。

「ハアハア…」

どんどんと鉛のように重たくなっていく足を、何とか前に出して進んでいった。

器官の奥に何かが挟まったように息が出来なくなっていく。どうやら喘息の発作が出始めたようだ。呼吸がしづらくて、息苦しい。

それでも私は、足を止めなかった。

雨に濡れた苔だらけの足元はぬめり気があって滑りやすかった。

「ガタンッ!ドシャッ!」

傍にあった石に躓いて、泥の中に顔からこけてしまった。

「っ…!」

それでも立ち上がって、ひたすら前に前に、登っていく。

さっきこけて傷の出来た膝からは、泥の混じった赤黒い血が噴き出ていた。

泥と雨に濡れた紺色の制服に、涙か雨か、分からないものが零れ落ちていく。

それでも前へ、前へ―

一華の元に行くために、

走った―



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