表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むすかり  作者: やきぶたたまこめし
21/30

まだ頼りない足元を―

白くてつやつやのご飯の上に、真っ赤な明太子を乗せた。

お茶碗の端にひとまとまりにして、すくい上げた口に運んでいく。

私は、明太子ご飯が大好きだ。

ほんのりピリっとした辛さがあるのを、ご飯が優しく包み込んでくれる。

明太子ご飯なら、何杯でも食べられそうな気がする。

特に、前に家族旅行で食べた本場の「博多明太」は、無限に食べられそうなくらい美味しかった。

もう一度食べたいな、と今、ふと思った。

今日は精神科の病院に、先日受けた検査の結果を聞きに行く予定だ。

少しだけある胸の奥の不安に気づくと、無性に明太子ご飯が食べたくなったのだ。

朝ごはんを食べ終えると、普段着に着替え、母の車に乗り、病院へと向かった。


「先日受けた検査の結果ですが、このようになっております。」

ぽっちゃりとした体形のほんわりとした雰囲気の女の先生が、私たちに何かがびっしりと書かれたプリントを見せてきた。

「奈穂さん、今まで授業を受けていて、他のことに気が散って集中できなかったり、周りの音、光が気になったりしたことはありませんか?」

改めて考えてみると、そんなことがたくさんあった。

周りの視線や言葉、蛍光灯の眩しすぎるくらいの光や、隣のクラスから聞こえる先生の大声、工事の騒音、など色々なことに気が散り、話を聞くどころではなかったのを覚えている。

「確かに、周りの視線や光、音が過敏に気になったりします。」

先生によると、周りの視線や光、音などに過敏に反応してしまう人のことを「HSP―神経過敏症」というらしい。人口の5人に1人はいるらしく、なんでも生まれつきの体質なんだ、と言っていた。

私は病院の懐かしい薬の匂いを感じながら、先生の話をなんとなく聞いていた。

最後に、先生が言った。

「学校に行けない子たちには、一人一人、様々な理由や辛さ、生き苦しさを抱えています。その中で、学校に行く最後の一歩がなかなか踏み出せず、ずっと通えないままの子もいます。だから奈穂さんが踏み出した一歩も、そう簡単なものではなかったはずです。…今まで本当に、よく頑張りましたね。」

優しいまなざしだった。

まだ頼りない足元を、強く優しく、照らしてくれているようだ。

「その中で、学校に通えない子を理解してくれない人、疎ましく思う人も、たくさんいると思います。こればかりはしょうがないことで、学校に通えない子はそういう声に耐え、認めることも大切なことなのではないか、と思います。これからも、奈穂さんなりのペースで歩んで行ってくれれば、と思っています。頑張ってくださいね。」

今まで誰も、私の辛さも苦しさも、分かってくれないと思っていた。

誰も完全には分かってくれないんだ、って。

そう思って、諦めていた。

でもこんな風に言ってくれたら、今までの私の苦しみを辛さが、少しでも報われたような気がした。

私は、目の端に小さく浮かぶ雫を、空色のハンカチで拭った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ