夕日色の空
二人で、並んで歩いていく。
ザワザワと周りの人たちの話し声が聞こえてきて、耳を塞ぎたくなるくらいうるさかった。
一人一人がお洒落で、たくさん人がいた。
どうしても、制服姿の子や私と同じくらいの年齢の子を見ると、足が竦んだ。
一華に引っ張られながら歩く商店街は、砂の混じった泥の匂いがした。
「ねえ奈穂!たこ焼き、食べない?」
一華が立ち止まって振り向いた。
たこ焼きは好きだけど、今はあまり食欲がない。
「私は…」
いいよ、と言おうとする前に、一華が言った。
「奈穂。今は食欲ないかもしれないけど、二人で半分個して、食べない…?
せっかく来たんだから、楽しもう!あっ、でも、もし嫌なら、無理しなくてもいいけど…。」
一華の表情が一瞬、暗く淀んでいったのが分かった。
それに、一華の言う通りだった。こんなことばかり気にしていては、来た意味がない。
いつまでも怯えていては駄目だ。
もっと、強くならなければ。
「うん!食べよう!二人で。」
「え、あ、うん!」
一華の嬉しそうな笑顔が、秋の湿っぽい空気を優しく包み込んでくれた。
「じゃあ、さっそく、並ぼう!」
「うん!」
一華に引っ張られて、行列のできたたこ焼き屋の前に、二人で並んだ。
「たこ焼き一つ、お願いします!」
「あいよっ!」
たこ焼きの香ばしい匂いがする。
「わぁ!見て!クルクルしてるよ!」
屋台のおじさんの早業を見た一華が、幼い子供みたいな声を出した。
「ほんとだ!クルクルしてる!」
白い湯気を立てて、腹一杯に沢山の具材を詰めたたこ焼きが、クルクルと回っている。
いつも出来立てを食べているからか、こんな風に作っている過程を見られるのは、すごく新鮮だった。
「ねえいつかさ、奈穂とたこ焼きパーティーしたいな!」
一華と一緒にたこ焼きパーティーをしているところを想像するだけで、胸がわくわくして嬉しくて仕方なかった。
「いいね!しよう!いつか!」
「うん!」
「お嬢ちゃんたち、もうすぐ出来るから、待ってなよ!」
頭にタオルを巻きつけた屋台のおじさんが、勢いよく話しかけてきた。
驚いて何も言えずにいると、「はい!」と一華がた助け舟を出してくれた。
「ありがとう。」
私がそう言うと、
「怖がらなくていいからね。」
と、言ってくれた。
「うん!」
出来るだけ、笑えていたら嬉しいな。
「早く食べよっ!」
「うん!」
一人で握りしめていたはずの手の中には、いつの間にかたこ焼きの袋が握られていた。
私はホカホカのたこ焼きを口に運んだ。
出汁とソースの味が、口の中を優しく包み込んでくれた。
❀❀
あの日。あの、秋祭りの日。
正直私は、自分が行きたかったから奈穂を誘った。
さすがに一人で行くのは、勇気がなかったし、奈穂もリベンジになるからちょうどいいと思った。
だから、秋祭りの話をした時の奈穂の反応には、疑問しか湧かなかった。
でも―、
あの時。
「ごめん…。」「一華、やっぱり私、行けないや…。」
ひどく怯えた様子の奈穂がそう言って走り出した時、
あの時の自分に似ている、と思った。
学校に行くことが怖くて、
同じ学校の子に会うことが怖くて、
外に出ることすらも怖くて、
毎日、夜が来るたびに泣いていた―あの頃の私と。
すぐに分かった。
ずっと一人で苦しんできたんだ、と。
そう感じると、無意識に走り出していた。
力になりたい―と思ったわけじゃない。
ただ―、思った。
この子なら、私の気持ち分かって、この怖い世界で、一緒に歩んでくれるんじゃないか、と。
だから私は、奈穂を利用しようと、したんだ―




