第七話 準備と森の偵察
準備と森の偵察
二通目の手紙を読んだ日から、十日が経過した。
マイルームの屋敷の探索が終わり、ストレージの整理も完了した。
屋敷は、l型をしており、エントランスから右に小さい接客室、ダイニング、キッチンがあり、その先には攻防が続いている。
左は奥に向かって大きい応接室、リビング、個人倉庫部屋、トイレ、バスルームと続いていた。
一階の部屋は、全て使用可能な状態で、エントランスから右に階段がありそこから二階に昇れる。
二階はベランダに出ることが出来、そこから庭や畑、訓練場などを見渡すことが出来る。
それ以外の二階の部屋はゲーム内では使用できなかったが、今は使用可能で、主寝室、書斎、個室が四つあった。
私が寝室としてベッドを置いてあった部屋は、一階の大きな応接室で、主寝室にベッドなどは運んでおいた。
家具などは、ほぼ工房で自作し、どうしても私では作れない物だけをマーケットで、買い揃えた。
ミルフィの私室も用意したが、私の私室となった主寝室で一緒に寝ている。
トイレやバスルーム、キッチンなどの水回りの状況を把握しようとしたが、上下水道がどうなっているのか見当がつかず、魔法的な何かで理不尽な仕組みになっているのだと無理やり納得することにした。
その他では、このマイルームの陽の状態について、把握しておいた。
どうやら、外の状況とリンクしているようで、外が夜なら、マイルーム内も夜になる。
また、バイクーガは、太陽充電式なので、マイルームの疑似太陽でも充電可能か試してみたところ、問題なく充電ができたので、電気が必要になってもこれなら問題なさそうだ。
個人倉庫の整理としてまずは錬金術で作れる薬の製作から始めた。
優先順位は、この通りにした。
万能完全回復薬エリクサー
各種状態異常回復ポーション
エクスマジックポーション、エクスヒールポーション
ハイマジックポーション、ハイヒールポーション
マジックポーション、ヒールポーション
練習用ヒールポーション
エリクサーを最優先にしたのは、文字通りの万能完全回復薬なので、四肢欠損をしていようが死にかけだろうが、命さえあれば、完全回復してくれるし、他のポーションでは回復しない病気でも回復させてくれるので、これが最優先なのは当然となる。
次の各種状態異常回復ポーションは、病状にもよるが、戦闘での消費よりも病気のための薬として用意した。
ゲーム内のクエストで、石化病と言う病気に侵されている依頼者の身内を石化回復ポーションで治すクエストがあり、同じようなクエストは他にもいくつかあったのをよく覚えている。
この世界でも、同じような病気がある可能性があるので、特効薬として用意しておいた。
続くマジックポーションとヒールポーションだが、ヒールポーションよりも私にとってはマジックポーションの方が生命線になりかねないと考えた。
この世界の住民として常識を把握し、しっかり根付くまではマーケットの利用は、私の生命線となりかねないので、それをいつでも使えるようにしておくのは大切だと感じて、マジックポーションを優先にした。
とは言え、死んでしまったら、意味がないので、ヒールポーションもしっかり作っておいた。
最後に、練習用ヒールポーションも作った。
魔物素材が必要となるポーションもあるが、マイルーム内のはたけで、ハイポーションまでと一部の状態異常回復ポーションは製作可能だ。
だが、私の畑だけですべてを賄い続けるわけにもいかないので、この世界の薬草に何があるのかを、外にでて軽く散策をした。
その時に、練習用ヒールポーションの素材となるヤクソウが大量に自生していることを確認したので、この世界でも売れる品として練習用ヒールポーションを用意しておいた。
どんな形でも、この世界の通貨を手に入れなければ、生活の基盤を整えるスタートに立てないので、数個で一食分の食事代でも手に入れば十分だと考えている。
ちなみに、製作可能アイテムには、劣化品とも言えるLQ、ロークオリティー、表示なしのNQ、ノーマルクオリティー、一つ上のアイテムに匹敵するHQ、ハイクオリティーの三つの投球があり、私が作れるアイテムのほとんどが、HQになる。
練習用ヒールポーションと言っても全てがHQであり、通常のヒールポーションと同等の回復量があるので、そのあたりがわかる人が買ってくれることを願っている。
ついでと言うか、余った薬の素材で何種類かの毒薬も大量に作っておいた。
何に使うかわからないが、これでストックしてあった薬物素材はすべて使いきることができた。
好物類の整理については、鍛治工房でインゴットにすることもできるのだが、錬金術でもできるので、今回は錬金術を使うことにした。
ここは現実世界だと認識して考えると、鉱石には、一種類の金属しか入っているわけではなく、ふくすうの 金属が混ざり込んでいることの方が多い。
そこで、全ての功績を訓練場に出して、金属ごとに抽出していく。
オリハルコン、アダマンタイト、ミスリル、プラチナ、金、銀、銅、鉄、黒鋼、他にもあるかわからない物まで抽出してみた。
意外なほどに、多数の物が混ざり込んでいたようで、炭素鉱石として、宝石類も抽出できてしまった。
それらをインゴットの形にしてから、整理していった。
残った砂で、サンドゴーレムを作り、畑と庭の管理を命じておいた。
ゴーレムクリエイトと言う魔法を使ったのだが、使おうとしたときに今までは知らなかった情報が頭の中に入っていることに築き、魔石を核にしておけば、従魔として働いてくれるそうなので、その通りに魔石を入れておいた。
しばらくの間、ゴーレムたちを見守ろうと思う。
この他には料理用の素材も大量に合ったので、それらの作り置きをしたり、使い捨て用のアイテムも素材がある限り、作り置きをしておいた。
また、予定通りに個人倉庫にゲーム内マネーも移し終えた。
この時に気が付いたのだが、ゲーム内マネーは、最低単位から金貨で、それ以外の硬貨がないらしい。
私の個人倉庫内には、円に直したなら、それなりの国の年間予算並みの金貨が入っていることになる。
軽く調べた限りでは、限りなく純金に近そうなので、少し怖くなってしまった。
とは言え、ゲーム内マネーを他人に見せるつもりはないので、あまり気にしない方が良いだろう。
これで、ストレージも個人倉庫内も、かなりすっきりさせることができた。
この間、ミルフィは何をしていたのかと言うと、私たちが狩拠点としている元ダンジョンの浅い洞窟が見える範囲で、偵察をしてもらっていたのだ。
その結果、いくつかのことが判明した。
まず、南にバイクーガで朝から日の出ている時間を一日走り続けたなら、森が抜けられることがわかった。
どうやら、深く考えずに南に進んだが、当たりを引いたと考えてよいようだ。
さらに、森の浅層には、一件の屋敷が経っていることも確認できた。
そして、森を抜けて半日ほど移動したところに、高い石壁を持つ城郭都市があることも分かった。
城郭都市があるということなのだから、ある程度の文明がこの地に根付いていることになる。
出合うのが、文明があるかどうかもわからないような人類ではないことが確認できたのは、安心材料と考えてよいだろう。
ちなみに北には、壁のようにそびえる山脈があるそうだ。
「姉様ただいまなの!」
窓から入る光は、夕暮れ時の光になっていて、ミルフィの偵察が終わったようだ。
疑似太陽とは言え、マイルームの中でも外と同じ時間が流れていることがわかるのは、ありがたい。
「おかえり。森の屋敷に人影はあった?」
「遠目だと、やっぱりわかんないの。行ってみるしかないと思うの」
「そっかぁ。しょうがないか。」
薬草を確認するために外を散策していたとき、この世界の魔物と何度か遭遇した。
正直なところ、私が外を歩くのに不安を感じるほどの魔物は、この森にいないようで、それなりの作りをした建物やらを用意したなら、この森を本格的な拠点にしても問題はないと思っている。
そんな森なので、それなりの力を持つ人物なら、森に拠点を構えていてもおかしくはない。
「じゃあ、明日の早朝から移動を始めて、訪問をしてみよっか」
「うん、そうするの」
それから、移動のための準備をしてから、食事を済ませ、入浴をして眠りについた。
明日は、いよいよ、第一異世界人との遭遇となるかもしれない。どうなるかわからないが、あまり期待はせずにいよう。