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第二話 え、ここはどこ?

 え、ここはどこ?


 ぼんやりとした意識のまま、瞼を開ける。


 青い空が瞳に飛び込んできた。


 え、ここはどこ?


 横になっていた体を起こし、座った状態で周囲を確認すると、木々に囲まれた泉の近くで寝ていたようだ。

 ここで目覚める直前の自分の記憶を思い出す。


 確か……、ゲームをしていて、招待状の【はい】のアイコンを操作したら、強い光を感じたところで終わっている?


 ふと、手を見るとどこかで見たことのある黒いロンググローブがされており、それを外してみると記憶にある自分の手よりもはるかに白い手が見えた。

 さらにその指には、高価そうな指輪がいくつもはまっている。

 服装も気になり調べてみると、黒い生地に金糸の豪華な刺繍が施されたローブを身に着けていた。

 傍らには、水晶玉のような石がはまった金属の杖が転がっている。


 うーん、これは、魔導王のローブと魔導王の杖かな。どういうことだろう……。

 髪を一房手に取り色を調べてみると、金色の髪をしている。

 もう、これは夢だな。


 私はどうやら、長年使っていたマイアバターのユウナになっているようだ。

 ネットゲームを十年近く続けてきたのだから思い入れも強く、自分がユウナの姿になりゲームの世界で戦う夢は、何度か見たことがある。


 だが、そういう夢ではあまり記憶がはっきりせずに、ユウナの気持ちになって戦っている場合が多いので、私の意識はほとんどない。

 今回の夢は違うようなので、とりあえず装備やらを見てみることにする。

 ゲーム内では、見つめるだけでアイテムの情報が分かったはずだが、魔導王の杖をしばらく見つめてみても何の情報も入手できない。

 今、私が着ている魔導王のローブの情報も入手できない。


 ストレージを確認しようと思ったが、どうするべきかと悩んでいると、頭の中にストレージの情報が流れ込んできた。

 どうやら、アイテムの詳細はわからないが、名前や個数はストレージ内にあれば確認できるようだ。

 可視化も出来るようで、ストレージと頭の中で唱えると、ストレージウィンドウが目の前に現れた。


 取り出し方は、何を取り出したいか、複数ある品なら幾つ取り出したいかを頭の中で唱えると取り出すことができ、入れたい時も触れている物なら収納と頭の中で唱えるだけでストレージ内に収納できるようだった。

 とりあえず、寝起きなので何か飲み物と軽い食事はないかと眺めていると、クリームパンとアップルジュースがあった。

 アイテムは、九九九で、まとめられているので、頭の中で操作してそれぞれを一つずつ取り出すことに成功した。


 クリームパンを食べてみると、ふっくらと柔らかいパン生地に、しっかりとしたカスタードクリームが詰まっているクリームパンだった。

 アップルジュースは、ビンからしっかり冷えていて、こちらも良い味をしている。

 両方ともスタミナポイントであるSPを回復させ、食べ物はヒットポイントであるHPを回復、飲み物はマジックポイントであるMPを回復させる作用があり、品によっては追加作用があった。


 食事を摂りながら他のインターフェイスを試していると、マップが反応して、脳内に周辺の地図が広がって行った。

 マップには周辺の地形と無数の魔物らしき存在が確認できた。

 だが、私の存在を認識していないのか、敵対行動をしているようには見えないので、気にしなくても良いだろう。


 それにしても、尺度を変えても森しかなさそう。


 他のインターフェイスで使えるものを探していると、マーケットが使えることが分かった。

 マーケットを使おうとすると、マーケットウィンドウが現れた。

 ウィンドウには、種類別に分けられたタブがあり、課金して購入するアイテムとゲーム内マネーで購入するアイテムが一緒に並べられていた。


 うーん、よくわからないけど、とりあえず、眺めてみよう。


 どうやら、ゲームで使えていたマーケットと違うようで、課金で購入するアイテムとゲーム内マネーで購入するアイテムの差はなく、どちらもゲーム内マネーで購入でき、さらにMPをチャージしてポイントにしてから購入することも可能となるシステムが追加されている。


 あ、これはイベント限定だったアイテムだ!

 ステータスリセットなどの便利アイテムがなく、過去に他のゲームやアニメ作品とコラボして販売されたアイテムが商品リストに並んでいた。


 じっくり見たいので、一度マーケットウィンドウを閉じて、ストレージから、鍵の形をしたアイテムを取り出す。


 どうせ夢の中なんだから、使えるはずだよね……。


 何もない空間に鍵を押し当てると、鍵先が空間に吸い込まれ、それと同時に、木製の扉が現れた。

 そのまま鍵を回すと、カチッと音がして、鍵を抜き、ドアノブに手をかけて回す。


 中に入ると、エントランスがあり、ドアのカギを内から掛けて、中に進んで行く。

 これは、ネットゲームでよくあるマイルームシステムだ。

 内側から鍵をかけると、外から見える扉が消える設定にしてある。

 見えるままにする設定もできるので、クランハウスなどの中にある見た目だけで中に入れない扉に張り付けることもできた。

 あまりおかしなところに張り付けると、運営側から警告が来たり、マイルームを使用禁止にもされるので、固定する場所は限られていた。

 このマイルームは、入り口こそ簡素な木製の扉になっているが、内部は、それなりの広さのある洋風の屋敷となっていて、個人倉庫があり、私のアイテムがそこに保管されている。

 また庭や畑、訓練場に工房などもあり、生産系スキルを上げる時にも使える。

 リビングのソファーに寝ころび、再びマーケットを開き、商品リストを眺める。


 これを購入しよう!


 目を付けたアイテムの必要分だけMPをチャージしていく。

 チャージ方法は、チャージをすると決めたと同時に、使用方法が頭の中に流れてきたので、問題なくチャージできそうだ。

 体の中から、感じたことのない何かが抜けて行くのがわかる。

 これが魔力なのだろう。


 私のスキルには魔力回復速度上昇もあるので、多少MPを減らしても問題にはならない。

 訓練場に出て、マーケットから商品を購入する。

 どうやら商品は、ストレージに入ったようだ。

 ストレージを操作して購入したアイテムを呼び出すと、目の前にやたらとタイヤの太いバイクが現れた。


 これはSF系のアニメで登場する戦闘用バイクで、バイクーガと言う。

 今のローブ姿では乗りにくいので、適当にこれに会う服装を購入する。

 こちらも同じアニメで登場する装備でソフトアーマーと言い、防弾、防刃、耐衝撃、耐火、耐水などの機能がある近未来的な戦闘服となる。


 屋敷の中に戻り、急いで着替えたが、丁度良い感じだ。

 全身が映る姿見を眺めてみたが、間違いなく見慣れたユウナの姿だった。

 ユウナは、ゲームを開始する直前に同じ研究室にいた先輩方が、悪ふざけなのか色々とこね回した結果、私の顔立ちをベースに西洋風の特徴を重ね合わせ、さらに少し幼い顔立ちに見えるように作り込まれた。

 永遠の十七歳、金髪碧眼北欧風美少女と言うのがユウナのテーマになっていると当時の先輩方は熱弁していた。

 スタイルまでも幼くされると、切ないのでそこだけはしっかり私も口を出し、程よい感じの姿になっていると自負している。


 しっかり着替えて準備万端となったので、バイクーガに乗り込み、操作をしてみる。

 エンジンをかけるとカプセル状にバイクーガの中に収納され、色々と操作画面が現れた。

 どうやら、初動のチェックを自動でしているようで、私に色々と指示を出してくれている。

 操作方法も指示してくれるので、そのまま運転を始められた。

 バイクと言うよりも、体重移動による操作がいらないので、少し変わった自動車の方が感覚は近いかもしれない。

 アクセルとブレーキは足にあり、ハンドルは進行方法の操作と各種装備の操作に使われ、自動走行も可能らしい。


 しばらく庭にある訓練場で走っていたが、戦闘装備の確認もしたいので、一度マイルームから外へ出てみた。


 さて、戦闘装備で一番気になっているのは、主砲とも言えるブラストキャノンだ。

 マップには、方角も出ているので、とりあえず真南にぶっ放してみる。


 マップで南をよく確認して、そちらに向かってブラストキャノンを放つ。


 ドガーン!


 轟音が轟き、土埃が舞った。

 音は、ブラストキャノンの音ではなく、森の木々が消し飛んだ音のようだ。

 地面はえぐれ、木々も消え去っている。


 ゲーム中で見たブラストキャノンの威力とは段違いに感じるが、自分で使う分には、困らないので気にしないことにしよう。

 さて、思いのほかの威力だが、バイクーガで走行可能な道ができてしまった。

 これは、行くしかないよね……。


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