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第十話 修行と言う名の検証の日々

 修行と言う名の検証の日々


 森の屋敷に住むようになってから、三か月が経過した。

 手始めに、私の使う魔法や生産系スキルをドロシー改め師匠に見せて、この世界の魔法などとどう違うのかの検証をすることから始めていった。

 師匠が言うには、魔法名を唱えるだけで魔法が発動するプロセスが異常すぎるそうで、そこを入念に調べていった。

 この世界の魔法の基本は、体内の魔力を集めながら、詠唱を行い、魔法名を最後に唱え、発動するそうだ。

 詠唱は、魔法のイメージを固めるために必要とされていて、イメージが固まれば、詠唱はいらなくなる。


 さらに、イメージが強く固まっていれば、魔法名すら唱える必要がなくなる。

 だが、通常詠唱も魔法名だけを唱える短縮詠唱も、魔法名すら言わない無詠唱も、魔法で起きる現象をイメージできるようにならなければ、何も起こらないのだ。


 それを踏まえたうえで、私の魔法を検証すると、特に何もイメージしていないし、気にしているのは、魔法に込める魔力量や魔力がしっかり操作出来ているかなどになる。

 元がゲームアバターなので、こんなところかと納得している私だが、この世界の魔法と長い間、向き合ってきた師匠からしたら、そうはいかない。

 いろいろと、その後も検証をしていったが、結局、私が規格外な存在ということがわかっただけだった。

 ちなみに、ホーリードラゴンのミルフィも多少は魔法を使えるのだが、彼女の場合は、この世界の魔法のプロセスを一応踏んでいるらしい。

 ホーリードラゴンは、主に光魔法を使いこなすのだが、それが本能の部分でわかっているので、この世界のプロセスは踏んでいても、実際は私と同じような状況に見えるそうだ。


 次に、戦技についての検証もした。

 戦技と呼んでいるが、やはり武術系スキルのようで、槌術の戦技を師匠が見せてくれた。

 師匠は、手ごろな木の前に立ち、手にしたロングメイスを振り上げて、思い切り振り下ろすと、どこからそんな力が出ているのか謎にしか思えない強打を叩き込み、木を粉砕してしまった。

 師匠が放ったのは、パワーブレイクと言う戦技で、私も使える業だ。

 だが、ここで大きな疑問が浮かび上がる。

 魔法は、詠唱などでイメージを固めて放つのに、戦技は、詠唱もなく放つことができるのだ。

 師匠に、このことを離すと、戦技はそういう物だから、あまり気にされていないらしいと聞いた。

 とはいえ、検証をする者はいたらしく、一応の推論は語られており、自らの体に魔力を纏わせることは、現象を実体化させる魔法よりもはるかに簡単で、無詠唱でも使えることになっているそうだ。

 それが事実なのかを、師匠と二人でいろいろな戦技を使い、検証をして行ったが、魔法と戦技の大きな違いは、わからなかった。

 私としては、魔物と近接戦闘をするのは苦手なようで、魔法を打っている方が楽に感じる。

 とは言え、このユウナの体は、しっかりと武術や戦技を覚えているので、その気になれば、森の魔物の大量虐殺ができてしまう手ごたえがあった。


 そんなことをしながら、この世界のことも学んでいった。

 この世界の文明度は、中世から近世程度のようで、大きな発展もせず、世界規模の戦国時代が長い間、続いている状況らしい。

 ある程度世界全体の様子は知れ渡っているが、小競り合い程度の物から大規模な物まで、毎年どこかで戦争をしているそうだ。

 だが、魔法や魔道具などがあるおかげで、地球の中世や近世よりは、暮らしやすそうに感じる。


 大陸として確認されているのは、ユラシア大陸、カフリア大陸、メリゴア大陸、ロンブス大陸の四つがあり、それぞれの大陸は、海峡や列島で結ばれていて、行き来は可能となっている。

 だが、大陸沿岸には、魔物は住んでいないそうなのだが、沿岸から離れると強力な魔物が現れるので、海を渡るときは、決められた海路から外れないようにしなければならないし、いざという時のために魔物対策もしなければならないので、簡単に大陸を行き来できるわけではない。

 この世界の船大工たちは、まだ見ぬ大陸がどこかにあると考えているそうで、強力な魔物が現れる海を渡れる船を作るのが夢だという。


 私たちがいるのは、ユラシア大陸東部になり、森を含めて南にある熱帯雨林までがイストジア王国の領土となっている。

 イストジア王国の西には大河があり、それを挟んでゲンゲル帝国がある。

 南の熱帯雨林を抜けると、ミャンメイ王国があり、北には、高い山脈を挟んで、アルブニア王国がある。

 イストジア王国とミャンメイ王国は、五〇〇年程前に、ゲンゲル帝国から独立した国で、独立後、長い間戦争状態が続いているそうだ。

 とは言ってもゲンゲル帝国も常に戦争ができるわけでもなく、何度も休戦期間を設けながら、戦争を続けている。


 また、この世界の人種は、大きく分けて三種があるそうで、人間種、獣人種、妖精種がある。

 人間種は、肌、髪、瞳などの色の違いしかないが、獣人種は、様々な獣の要素を受け継いでいるので、多岐にわたる姿があり、妖精種には、エルフやドワーフにフェアリアなどがいる。

 もしかしたら魔物の中には、本来、妖精種だった者たちが混ざっているのかもしれないと、屋敷にいるアルルーナたちを見ていると思ってしまう。


 さらに、この世界、主にユラシア大陸なのだが、千年ほど前に統一王朝があり、そこで作られた硬貨が、現在でも目安としてユラシア大陸全体で使われており、たの大陸でも、この硬貨が基準となっているそうだ。

 デザインは、製造した国々でちがいはあるが、含有金属の量は、同じなので、どこに行っても統一通貨として使えるらしい。

 小銅貨、銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、魔銀貨、大魔銀貨、魔金貨、大魔金貨となっている。

 それぞれ十の位で上がって行くので、わかりやすいが、大魔金貨なんて、どれくらいの価値になるのか考えると恐ろしい。

 ちなみに、私が持っているゲーム内マネーの金貨とこの世界の金貨を比べたところ、金の含有量にかなりの違いがあるようなので、この世界では、やはり使えないようだ。

 もちろん、私の金貨は、おそらく純金なので、この世界の金貨よりは、価値は高いのだとは思う。


 そんなことを教えられながら、日々の生活を続け、当初の区切りとしていた一か月は、あっという間に過ぎてしまった。

 その後も、私と師匠は、案外気が合うようで、そのままいろいろと検証したり、教えてもらったりと日々は過ぎて行った。


「さて、ユウナ、この世界のことは、おおよそ分かったと思うが、どんな感じだい?」

「私の持っている能力が、この世界のそれとは、大きく違うことはわかりました。そのうえで、私に特に欠けていることを挙げると、細かな魔力操作でしょうか?」


 今、私は、リビングのソファーに座り、ユーリシュカの入れてくれた紅茶を飲みながら、師匠と話している。

 ミルフィは、最近、狩に目覚めたようで、ここにはいない。

 夕食の素材を、後程届けてくれるだろう。


「細かな魔力操作だけなら、ここでも覚えて行ける。それに、まだまだ知らない知識もあるだろうから、それもここで覚えて行ける。だがね、折角だし、ちょっと王都の学園ってのを見に行ってみないかい?」

「王都の学園ですか?」

「そうだ。あんた、この国の歴史を調べたことはあったかい?」

「確か、ゲンゲル帝国の支配を受けていた者たちが立ち上がって、建国したとかでしたよね」

「そう、その中の中心人物にドロシア・エイストニアってのがいるんだ」


 ん、ドロシア……?


「種明かしってほどじゃないんだが、そのドロシアは、私のことさ。生まれはアルブニアなんだが、どうもエルフやドワーフたちの長命種特有の価値観が合わなくてね。放浪の旅をしていたら、丁度良く面白そうなことを始めようとしていた奴らがいて、手を貸したってのがことの始まりでね……」


 それからドロシア・エイストニアの話が語られていった。


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