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プロローグ、あるいは第一話 ゴッドブレスオンライン

こちらをご覧に来られた皆様、ありがとうございます。

作者は、視覚障害一級ですので、どうしても誤字脱字が多くなってしまいます。

ですので、誤字報告機能の活用を大歓迎しております。

また、脳内変換で問題のない方は、そちらもおすすめさせて頂きます。

それでは、よろしくお願いします!

 ゴッドブレスオンライン


 モニターの中では、巨大な銀色のエフェクトが徐々に消え去って行く様子を見つめる金髪の少女と白亜のドラゴンが映されている。

 私が長年プレーしてきたMMORPG【ゴッドブレスオンライン】のグランドクエストのラストバトルがまさに今、終わったところだ。


 グランドクエスト最終章が実装されるのと同時に、三か月後のゲーム終了の告知もされた。

 過疎状態だったこのゲームの終了の告知がされるのと同時に、半引退状態だったプレイヤーたちが集まり、レイドを組み、あっという間に最後のボスである邪神討伐は終わってしまった。

 それからは、誰がゲーム終了までに単独での邪神討伐をするかが話題になり、何人ものプレイヤーたちが邪神討伐に向かい散って行った。

 そうして、誰も単独討伐を成功できないままに二か月が経ち、私が戦いに向かい、見事単独討伐を達成したのだった。


 邪神が消滅する時に出ていた銀色のエフェクトが消え去り、その場には宝箱が残されてあった。

 ログウィンドウには、邪神討伐による膨大な経験値と金銭、それにいくつかの私の職業である魔法士系でも装備できる武具防具がドロップ品として表示されている。


 経験値はレベル上限に至っている私には関係ないし、残り一か月で終了するゲーム内で、金銭や新たな装備を貰っても仕方がないのだが、後で見分だけはしておこう。

 それとは別に宝箱があるが、おそらく単独討伐の特別報酬だろう。


 黒い布地に金色の豪華な刺繍が施されたローブを身に着けた私のアバターである金髪碧眼の少女が宝箱の前に立ち、箱を開けるモーションをする。


 ログ画面には、【招待状】を入手したと書かれてある。

 招待状?


 新しく、ゲームの運営会社が運営を開始するゲームのテスターの招待状だろうか。


 ストレージから招待状を取り出し、読み始める。


【ユウナ様へ

 新たな世界、新たな地へ旅立ってみませんか?】


 この短い文章が書かれたウィンドウが立ち上がり、その下に【はい】と【いいえ】のアイコンが出た。


 うーん、新たな世界、新たな地というのは、、運営会社が新たに始めるゲームのことなのだろうか。

 その後の旅立ってみませんかも、テスターのお誘いならわかるのだが、詳細が何もないままで【はい】と【いいえ】の選択肢にいきなりなるのは、胡散臭い。

 それでも、私の心は、【はい】を選びたがっている。


 大学時代に担当教授にすすめられて、このゴッドブレスオンラインを始めた。

 教授が言うには、良くできた経済システムが導入されているそうで、それを考察するだけでも面白いとのことだった。

 例えば、デイリークエストで綿の採取の依頼が出される。

 翌日にNPCが経営する裁縫店で、綿糸が安値で大量に売りに出される。

 一定量の販売量は毎日、確保されているが、季節やデイリークエストの状況で販売量も変われば、値段も変わる。

 当然、販売量が変わるのだから、売り切れも起こる。

 別の日には、デイリークエストで綿糸の納品が要求される時がある。

 そういう時は、生産系プレイヤーが、大量の綿糸を作り、戦闘系プレイヤーは、それを買って納品する。

 その結果、NPCの経営する裁縫店では、綿の布地の値段が安くなり大量に販売されるようになる。


 デイリークエストをこなしていると、所属する国への貢献度が上がり、貢献度に応じたクエストが受けられるようにもなる。

 この貢献度も、何もしないと減少してしまうので、ある程度デイリークエストを続けておかないと美味しいクエストが受けられなくなる。

 結局のところ、ある程度ゲーム内の経済システムに関わらないと、面白くならないのだ。

 他にもコンパクトにまとまった経済システムがいくつも導入されていて、本格的な商人プレーや職人プレーも可能になっていた。

 他のネトゲを知らない私だったが、ゲーム内のシステムを上手く使うことで、ただ戦うだけのデイリークエストだけではなく、ゲーム内の経済と連結させることで、プレイヤーたちの満足度を上げることが出来、非戦闘系プレイヤーも安心して遊び続けられるこのシステムは、見事だと思ったのを強く覚えている。


 そんなゴッドブレスオンラインに魅了されてしまった私は、その後も続け、大学を卒業し、大学院の修士課程になっても遊び続けていた。

 こんな私を担当教授は哀れに思ってくれたのか、自らの友人が理事長をしている中高一貫校の社会系教師の職を斡旋してくれた。

 教員免許は中学と高校の社会科系免許を一通り持っていたし、大学院時代では、教授のゼミにいる大学生たちにいろいろと指導もしていたので問題なく教職の仕事に対応できた。

 とはいえ、私は授業や他の業務に無理のない範囲で手を抜くことはなかったが、生徒に寄り添い共に考え悩むような教師になる気にもなれなかった。


 まず、思春期の生徒たちの一人一人が考えていることなんてわかるはずがない。

 自分も思春期はあったのだから、どうにかなるだろうと思う方々もいるのかもしれないが、わからないものはわからないのだ。

 それはあたりまえのことで、大人だろうが子供だろうが、一人一人考えていることは違うのが当たり前だ。


 お友達感覚で接してくる生徒たちだが、、仲良くしたいと思ってくれるのはありがたい。

 だが、高校生基準のお友達感覚で接してこられると、何を言っているのかよくわからない。

 さらに、プライベートなSNSに誘われても、相手をするつもりはないので、むしろ誘わないでほしい。

 学校連絡用のSNSは用意してあるので、用事があるなら、そちらに書き込むように促していた。

 そもそも、教師と生徒の関係なのだから、、お友達になるなら最低でも卒業後の話だ。

 まあ、私の場合は、卒業した生徒たちのことは、基本的に過去のこととしているので、お友達になるのはかなりの難易度が必要だろう。


 それに、生徒たちも、教師に夢を持たない方が良い。

 現実は厳しく、ロリコンは当たり前として、歪んだ性的思考の変態教師は、男女問わず、どこにでもいるのだ!

 私だって、隠れネトゲ廃人のような存在なのだから、人のことは言えない。


 非常に残念なことに、いじめ問題だってある。

 私は、教師であってカウンセラーじゃないのだ。

 教頭や学年主任に投げたが、受け取り拒否をされてしまい、強行手段にでた。

 いじめの当事者同士の保護者を呼び出し、レコーダー完備のお話会を開き、モンスターなペアレンツも淡々とお話をするしかない状況を作った。

 事件性も確認され、遠慮なく警察に通報もした。

 そんなことをしていると、学年主任や教頭やらが、いろいろと言ってくるが、お前らが拒否をしたのだから、知ったこっちゃない!


 結果的にいじめ対策に熱心な学園として地域で評価され、受験者が増加し、学園長は大喜びになりましたとさ。

 もちろん、校内も静かになったので全体の成績が上がり、私の無茶も黙認されるようになってしまった。

 これは、担任をもった年の出来事で、一年でそれなりの結果がでたからよかったものの、結果がでなければ酷いことになっていたのだろうな……。

 同僚の教師たちからは、未来ある生徒たちに対してやりすぎじゃないかや生徒たちの心のケアの問題やらと指摘を受けたが、恫喝、恐喝、暴力など、どう見ても法律案件で合って私の知るところではない。

 結果として私は、アンタッチャブルな存在として同僚たちから扱われるようになり、無茶の代償なのか職場に友人と呼べる存在はいなくなりましたとさ。

 だが、理事長とは仲良くなったので、気にしていない、本当なんだからね……。


 そんな日々でも、ゲームは続け平日にはいくつか提示されるデイリークエストの中で、短時間で終わるクエストを選び、残った時間は、フレンドたちとチャットで話していたり、休日には獲得経験値増量の課金アイテムを使い、がっつり狩りをしたりと、やり込み要素をとことんまでやり込んだと思う。

 いわゆるガチ勢や攻略組と呼ばれるようになり、レベルキャップが解放されてもすぐにレベル上限に到達し、人数限定最上位職の一つ、アークマギロードにもなった。


 そんな二十代を過ごしていれば非モテにもなるが、青春的なイベントは十代のうちに一通り済ませているので後悔はない!

 それなりに社会人らしく生活はしていたし、見た目も整える努力もしていたので、教職と関係のない知り合いからそこそこ誘われたりもしたが、ネトゲが気になりほとんど断っていた。

 だが、アラサーと呼ばれる年齢になり、もうすぐ三十歳になるところで結婚の二文字がチラつき始め、正直なところ、煩わしくてしょうがない。


 そんなところでのゴッドブレスオンライン終了の告知は、ありがたいとも思った。

 終了するくらいなのだから、それなりに過疎状態でもあったこのゲームが終われば、ゲームを引退して、婚活に励むのも悪くないかと思っていた。

 だが、ここで新たなゲームのお誘いだと!


 やるしかないじゃないか!


 私こと佐伯優菜、二九歳、残念な三十路に突入する覚悟で参りましょう!


【はい】のアイコンを選択すると、モニターが強い光を放ち始め、そこで私は気を失った。


ここから始まるユウナの冒険を見守って頂けたら幸いです。

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