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一章9『昼食と夜のお誘い』

結果を言うとあの後必然的に時間を延長する羽目となってしまった。


絶対に店選びに失敗しないようにと三ツ星のイタリアン料理店にしたのは良いものの、お店に着いたときには既に食べ終わる頃には契約時間ギリギリとなってしまいそうだからだ。


俺はお店に行く前に「昼食は俺のお勧めのお店ですよ。本当に美味しいんですよ」と言うと、食い気味に桃さんは「本当!?わぁ〜とっても楽しみ♡」ととても喜んでいた。


反応を見る限り、これは上手くいったと思ったのだが、いざお店に着くと何故か桃さんは震えつつ俺に質問をしてきた。知らぬ間に何か失敗してしまったのだろうか?


「秀麻くん……ここってあの予約の取れないで有名なお店だよね?」


「あぁ……確かに巷ではそう言われているらしいですね。でも今日はしっかりと予約が取れているから大丈夫ですよ」


なかなか予約の取れないで有名だから、しっかりと予約が取れているのか不安に思ったのだろう。

だがノープロブレム。昨日のうちに予約の取れていることを確認し、今日も遅れそうであったから遅くなる旨を伝える電話をいれている。


要するに予約が取れていないと心配することはないのである!


桃さんは何かボソボソと言った後返事をした。


「うっうん分かった……」


「さっ入りましょうか」


と俺は桃さんと会話も少なめに店へと入った。







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








「一条様いらっしゃいませ。本日も奥の部屋を用意しております」


店へ入ると顔馴染みとなったシェフが出迎えてくれた。シェフは一瞬驚いた様な表情を見せていたが、其処はプロとしての意識からかスッと表情を戻していた。


「桃さんではいきましょう」


「……うん」


少し雰囲気に圧倒され気味なのか桃さんは口数が少ない様に思えた。


奥の部屋は黒と木目を基調としたテイストで、所々に見受けられる白の装飾が更に室内の雰囲気を良いものとしている。


このお店は周りを気にせず、食事を楽しんで欲しいという精神の元、全席部屋形式となっている。それ故に芸能人達御用達でもあったらしい。


尤も現在では中々予約の取れないお店として売れてしまった為に、芸能人達も少し離れ気味であるとか、ないとか。


この前一見さんお断りにしようかと迷っていると相談を受けたのは内緒である。


提供された食事は、ベーコンと菠薐草の入ったパスタ、マルゲリータピザ、ミネストローネにアクアパッツァとバーニャ・カウダだ。


ワインも頼みたいところだが、勿論未だ俺は未成年な為ワインは注文していない。桃さんも二十歳は過ぎていないらしくワインを注文することはない。


料理はどれもシェフが何年間にも渡る修行の末に生まれた一品らしく、いつ食べにきても美味しい。


それは桃さんからも分かる様に、恐る恐る口に入れた桃さんの顔は一瞬でとろけた様になり、「秀麻くん!これとっても美味しいよ!連れてきてくれてほっんとうにありがとう!!」と大満足な様子だ。


料理を食べ終わり、俺は桃さんに三十分分の時間延長金を含めたお金、二万三千円を封筒に入れて手渡した。


桃さんはハッと驚いた表情を見せたもの、「あっありがとうございます。またお願いしますね♡」

と気分良さげに言葉を述べていた。


店を出て駅に向かって少し歩いていると歓楽街が見えてきた。


桃さんは既に俺と一緒に居なくても良いのにも関わらず、何故か俺の腕に抱きつきとろけた表情をしていた。お金は発生していないはず……だよな?


男女が交わる為のホテルの横を過ぎるとき、桃さんは俺の腕を引っ張り、頬を赤らめながらホテルを指差しこう言った。 


「此処で少しだけ休んでいかないかな」


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