表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/310

深夜の執務室 その二

 深夜。

 吸血鬼もぐっすりお休みの時刻。

 ゼノン国王の執務室に、やわらかな明かりが灯っていた。


 ソファに腰かけているのは、ゼノン王とルードルフの二人。

 酒をあおりながら、静かに会話をしている。


「それにしても、シャルロットの成長には驚かされた」


「ええ、少し前までの危うい雰囲気は消え去りましたね。今は立派な王族です」


「ウルリカと出会えたおかげだ、あの小さな魔王には感謝してもしきれんな」


 カランッと、グラスの鳴る音が響く。


「ところでルードルフよ……」


「はい、なんでしょう?」


「ウルリカの言葉を覚えているか?」


 グラスを傾けながら、ゼノン王は問いかける。

 問われたルードルフは首をかしげて考え込む。


「ウルリカの言葉ですか……爆弾発言だらけで覚えきれませんよ……」


 ルードルフの返答に、ゼノン王は「クククッ」と笑みをこぼす。


「天井裏に潜んでいた吸血鬼を捕えた時だ。城内の吸血鬼の存在を問うただろう?」


「あの時ですか、確かウルリカは『いない』と言っていましたね」


 ぐっと酒を飲み干すゼノン王。

 そして、ルードルフへと真剣な視線を向ける。


「正確には『今はいない』と言ったのだ……」


 口元を手で押さえ、じっと考え込むルードルフ。

 静かな執務室に、時計の針の進む音だけが聞こえる。


「確かに……『今は』と言っていましたね……なるほど、そういうことですか……」


「流石に察しがいいな」


「つまり陛下は、『今はいない、しかし普段はもっといるぞ?』という風に解釈しているわけですね」


「その通りだ」


 執務室に、ピリついた空気が流れる。


「シャルロット達の倒した吸血鬼は、戦闘中に『あのお方』と言っていたそうだ」


「あのお方……何者でしょうか?」


「さあな……少なくとも、我々人間にとっては敵だろうな」


「危機は去っていない、ということですね……」


「ああ、気は抜けないぞ……」


 酒を注ぎ、カラカラと氷を鳴らす。

 そして「はぁ……」と深いため息をつくゼノン王。


「陛下?」


 ゼノン王の様子に、ルードルフは首をかしげる。

 先ほどまでの緊張感はどこへやら、急に緩い雰囲気だ。


「あぁ……いろいろ問題はあるな……だが、まずは……」


「まずは?」


「ウルリカの初登校を、無事に終わらせなければな」


「あぁ……はい、そうですね……」


 執務室に響く、ルードルフの呆れた声。


 こうして、ロームルス城の夜は更けていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ