海だ! 水着だ! 海水浴だ!
降り注ぐ黄色い陽光、寄せては返す白い波、どこまでも広がる青い海。課外授業は二日目に突入、待ち望んだ海水浴当日だ。
海水浴場は多くの人で賑わっている、しかしとある一角には誰も寄りつこうとしない。その理由はというと──。
「はぁ……はぁ……、ウルウルはまだか? 愛しいウルウルはまだなのか?」
「可愛いエリッサはまだこないのかい? これ以上は待ちきれないよ!」
不審極まる男が二人、アルフレッドとフラム王である。ピッチリと黒い海パンを履き、白い砂浜に仁王立ち。はぁはぁと鼻息を荒げる、その異様さに誰も近づけないのだ。
「王族とは変質者ばかりなのでしょうか?」
「んなわけないだろ、あれはまあ……突然変異じゃないか?」
「それにしても凄まじい威圧感、まるで百戦錬磨の戦士だ!」
男子三人は木陰で涼みながら、不審者と化した王と王子を遠巻きに眺めている。自分達まで不審者扱いされないよう、赤の他人を装っているのだ。そうして女子の着替えを待つこと数分、ようやく女子も着替え終わった模様。
「お待たせなのじゃ、着替えてきたのじゃーっ!」
「わーいっす、お待ちかねの海っすーっ!」
まず姿を現したのは、ウルリカ様とアンナマリアのちびっ子二人。
ウルリカ様は黒と紫の上下一体となった水着、散りばめられたコウモリ模様がよく似合っている。アンナマリアは純白の水着だ、腰回りのフリフリがとても可愛らしい。
「ぶぼはあぁーっ!?」
海水浴場に響き渡る絶叫、天まで届きそうな鼻血の噴水。ウルリカ様の姿を見た瞬間、アルフレッドは興奮のあまりバッタリと撃沈してしまう。
「待たせちゃったわね、シャルロットを着替えさせるのに手間取ったわ」
「待ってエリッサ、やっぱり恥ずかしいですわ……」
「何を言っているのよ、とっても似合っているじゃない!」
続いて姿を現したのは、シャルロットとエリッサの王女様二人。
シャルロットは桃色、エリッサは水色と、色違いでお揃いの水着を着ている。水着は上下に分かれているため、二人の可愛いおへそは丸見えだ。
「エリッサあばばばぁ!?」
再び海水浴場に響く絶叫、モクモクと広がる真っ白い湯気。フラム王は湯気を吹きあげてバタリ、愛娘の可愛らしい姿に撃沈である。
王族二人の大惨事に、近場の海水浴客は慌てて救助に向かう。偶然にも駆けつけたのは男ばかり、その結果さらなる悲劇を引き起こしてしまう。
「はぁ……はぁ……、やっぱり……暑いわ……」
なんとも間の悪いことに、続いて現れたのはクリスティーナだ。
極めて布面積の少ない、実に妖艶な黒の水着を着ての登場。白く透き通るような柔肌は、今にも水着の端から零れ落ちそうである。
あまりの色気に駆けつけた男達は、一斉に鼻血を噴出し卒倒。辺り一面は鼻血の海、もはや惨劇としかいいようがない。
「ほらリヴィ、いつまでも恥ずかしがらずに出てきてください!」
「はうぅ……お願いします、メイド服を着させてください……」
「海でメイド服なんて許されませんよ、さあ思い切っていきましょう!」
最後に姿を現したのは、オリヴィアとナターシャである。ナターシャの水着は機能性重視の質素なもの、全力で海を遊び倒す構えだ。
そしてオリヴィアは驚くことに、紐で結ぶ大人な水着を着ていた。さらに驚くべきはオリヴィアの体形、ずいぶんと育ちよく見事凹凸である。かといって太っているわけでもない、十四歳とは思えない色っぽさだ。
「全員……揃ったわね……、それじゃあ……海水浴を……楽しみましょう……」
「うむ、思いっきり遊ぶのじゃーっ!」
水着に着替えて準備万端、お目当ての海は目の前だ。鼻血の海は見なかったことにして、楽しい海水浴の幕開けである。




