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魔王と王女達の日常

 同盟締結の翌日、シャルロットとエリッサはロームルス城の中庭を散歩していた。


「昔はよくここで遊んだわね」


「ええ、泥だらけになって遊んだのを覚えていますわ」


「あっ、あの生垣を覚えているかしら? シャルロットってば勢いよく走りすぎて、あの生垣に頭から突っ込んだのよ」


「ちょっとエリッサ、そんなこと思い出させないでほしいですわ」


「くすくすっ」


 昔話に花を咲かせるシャルロットとエリッサ、とそこへ──。


「シャルロット……それにエリッサ王女……ごきげんよう……」


「クリスティーナお姉様!」


 ユラユラと歩いてくるクリスティーナ、相変わらず髪はボサボサで服はだらしなく着崩れしている。しかしラドックスから負わされたケガはキレイさっぱり消え去っている。


「お体の調子は大丈夫ですの?」


「すっかり元気……ウルリカのおかげ……」


「よかったですわ、流石ウルリカの魔法ですわね」


 姉の快気を喜ぶシャルロット、一方エリッサは頬を真っ赤に染めクネクネと身悶えしている。


「はあぅ、クリスティーナ様……っ」


「エリッサ王女……どうしたの……?」


「命懸けて私を守ってくださったクリスティーナ様! 強大な敵へと立ち向うお姿、決して挫けぬ不屈の精神。私の心は震えるばかり、まるで雷に打たれたよう!」


「そ……そう……」


「クリスティーナ様を見ているとドキドキしてきます! ああっ、きっと私はクリスティーナ様に憧れているのだわ!」


 エリッサはクリスティーナの手を取り、その場でクルクルと回り踊る。どうやら命を救われたことで、クリスティーナに惚れ込んでしまったらしい。


「あの……エリッサ王女……?」


「よければクリスティーナお姉様と呼ばせてください。いいえ、ティアお姉様と呼ばせてください!」


「ええと……その……」


「はあぅ……ティアお姉様、大好きですっ」


「どうしよう……シャルロット……」


 鼻息荒く迫るエリッサに、たじたじなクリスティーナなのであった。



 ✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡



 眩い日差しに涼やかな風、お出かけ日和のお昼時。

 シャルロットとエリッサは、ロームルス城の城門を潜ろうとしていた。


「さあ、城下町でお買い物ですわよ!」


「お父様へのお土産を買って帰りたいわ」


「でしたらオススメのお土産を紹介しますわね」


「あら、それは楽しみ!」


 仲よく手を繋ぎ城門を潜る二人の王女、とそこへ──。


「むむ、ロティとエリッサなのじゃ!」


 パタパタと駆け寄ってくるウルリカ様、すぐ後ろには汗だくのオリヴィアも一緒だ。


「はぁ……はぁ……、待ってください……」


「むぅ、早く異国のお菓子を食べたいのじゃ」


「アルフレッドお兄様と約束していた異国のお菓子ですわね?」


「うむ! 箱いっぱい用意してくれると言っておったのじゃ、楽しみなのじゃ!」


 どうやらウルリカ様は異国のお菓子を貰うため、わざわざロームルス城までやってきたらしい。アルフレッドは「届ける」と言っていたが、届くまで待てなかったようである。


「異国のお菓子、異国のお菓子! 甘くておいしい異国のお菓子!」


「相変わらずお菓子への執着は凄まじいですわね」


「今日は朝から千回ほど“異国のお菓子”と叫んでいますよ」


「千回も……」


 朝からウルリカ様の相手をしていたのだろう、オリヴィアはすっかりクタクタである。

 そんなオリヴィアに同情するシャルロット、一方エリッサは頬を真っ赤に染めクネクネと身悶えしている。


「はあぅ……っ」


「あらエリッサ、どうしましたの?」


「私とハミルカルを助けてくださったお方! 凶悪な魔人を圧倒するお力、神のごとき癒しの御業。私の心は灼熱しています、まるで燃え盛る火山のようだわ!」


「ふーむ?」


 エリッサはウルリカ様の手を取り、その場でピョンピョンと飛び跳ねる。どうやらクリスティーナに続きウルリカ様にも惚れ込んでしまったらしい。

 会談の際にウルリカ様へと熱い視線を注いでいたのは、惚れ込んでいたことが理由なのだろう。それにしても情緒の激しい王女様である。


「ドキドキが収まらないわ! ああっ、きっと私はウルウルに憧れているのね!」


「「ウルウル!?」」


 エリッサの口から飛び出した“ウルウル”という呼称に、ギョッと驚くオリヴィアとシャルロット。


「ねえエリッサ、どうしてウルリカのことをウルウルと呼んでいますの?」


「あら、もしかしてウルリカというお名前だったの? アルフレッド様はウルウルと呼んでいたから、てっきりウルウルというお名前だと思っていたわ」


「ああ、お兄様の影響ですのね……」


「ウルリカもウルウルもステキなお名前よね、一体どちらのお名前で呼ぶべきか迷ってしまうわ!」


「妾はどちらでもいいのじゃ、しかしそうすると……エリッサは“エリエリ”じゃな!」


「エリエリ!? はううんっ」


 憧れのウルリカ様から可愛らしい呼び名をつけられ、顔を真っ赤にしてパタリと倒れるエリッサなのであった。



 ✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡



 同盟締結から早二日。

 この日エリッサと南ディナール王国の元老院は、帰国のためロームルス城を出発しようとしていた。


「この度は命を救っていただき本当にありがとうございました。それはそうと三日も眠り続けていたとは、まったくもってお恥ずかしい……」


 ペコペコと頭を下げ続けているのはハミルカルである、どうやら救出されて以来ずっと眠っていたらしい。


「ではなエリッサ王女、ディナール王によろしく伝えてくれ」


「今度はワタクシから南ディナール王国へ遊びにいきますわ」


「ありがとうシャルロット、待ってるわね!」


 明るくお別れの挨拶を交わすエリッサ、と思いきや──。


「ティアお姉様……ウルウル……」


 ウルリカ様やクリスティーナとの別れに寂しさを感じているのだろう、今にも泣きだしそうである。


「エリッサ王女……、今回も……国境まで……見送ることになった……」


「ティアお姉様! それは本当なの?」


「ええ……本当……、今度こそ……無事に……見送るから……」


「きゃはんっ」


 顔を真っ赤にしてクネクネと踊り回るエリッサ、先ほどまでの寂し気な雰囲気はどこへやら。


「さあティアお姉様、一緒の馬車に乗りましょう!」


「え……ええ……」


 エリッサはクリスティーナの手を引き馬車へと乗り込んでいく。乗り込む馬車はウルリカ様の魔法によって作られた馬車だ、もちろん馬もウルリカ様の魔法で作られた作ったゴーレムである。


「またねエリッサ!」


「ええ、またねシャルロット!」


「それじゃあ……いってくる……」


 こうしてエリッサとハミルカル、そして南ディナール王国の元老院は無事に帰路へとついたのであった。

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