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帰還

 一方ロームルス城では、クリスティーナやエリッサを救うべく救出部隊が編成されつつあった。

 率先して走り回り部隊編成を手伝うゼノン王。汗を流す主君の姿に感化されたのか、兵士達の動きは非常に迅速だ。


「陛下、準備完了いたしました!」


「よし、では急ぎ救援へと向かってもらう!」


 部隊の出発を告げるゼノン王、とその時──。


「おい待て、あの馬車はなんだ?」


 ──城門を潜り現れる見慣れない馬車の一団。

 ツヤツヤと光る材質不明の荷台、粘土細工を思わせる無機質な馬、なぜか掲げられたロムルス王国の国旗。

 見れば見るほど怪し気な胡散臭い馬車の群れ。しかし馬車から降りてきたのは、誰もがよく知る人物だった。


「父上、ただいま戻りました」


「アルフレッドではないか!」


 アルフレッドに続き馬車から降りるシャルロット、そしてエリッサ。見知った人物の登場にゼノン王はホッと安堵する。


「シャルロット、そしてエリッサ王女も無事だったか」


「ただいま戻りましたわ、お父様」


「よくぞ戻った……いや待て、クリスティーナはどうした?」


「ご安心を父上、クリスティーナも無事です。馬車の中でグッスリ眠っていますよ、今は休ませてあげてください」


「そうか、無事ならばいいのだ」


 今度こそホッと安堵するゼノン王、心の底からクリスティーナのことを案じていたのだろう。


「ところでアルフレッドよ、この馬車は一体なんだ?」


「ウルウルの魔法で作られた馬車です」


「あの馬は? あれも魔法で作られているのか?」


「あの馬はゴーレムというらしいです、もちろんウルウルの魔法によるものです」


「本当は時空間魔法で戻る予定でしたの、でも時空間魔法は人間に大きな負担をかけるらしいのですわ。それで馬車を作ってもらい、陸路で戻ってきましたのよ」


「な、なるほど……」


 一から馬車を作りあげ、ついでに馬まで用意する。それを僅かな時間でやってのけるのだから、やはりウルリカ様の力は規格外といえるだろう。


「ゼノン王、この度はご心配をおかけしました」


 深々と頭を下げるエリッサ。十秒、二十秒、三十秒、いつまでたっても頭をあげようとしない。


「それとその……、私はロムルス王国の方々に酷いことを……それなのに助けていただいて……。本当にありがとうございます、そしてごめんなさい……ごめんなさい……」


 ようやく緊張の糸が切れたのだろう、崩れ落ちボロボロと涙を流すエリッサ。その姿を見たシャルロットも大粒の涙を流しながら、ギュッとエリッサを抱き締める。


「私ね、シャルロットにも謝りたかったのよ。シャルロットは大切なお友達なのに、酷いことをたくさん言ったわ。それに突き飛ばしてしまって……本当にごめんなさい……」


「謝らなくていいですわ、うぅ……」


 涙を流しギュッと抱き締めあう王女達。ゼノン王は静かに二人の元から離れる、声をかけて割り込むようなことはしない。


「ところでアルフレッドよ、ウルリカはどうした?」


「ああ、ウルウルでしたら」


 アルフレッドは馬車の中を指差す、そこには──。


「むにゃ……お腹一杯……ではないのじゃ、もっとお菓子なのじゃ……」


 気持ちよさそうに寝息を立てるウルリカ様、どうやら移動の途中で眠ってしまったらしい。


「ははっ、相変わらずだな」


「ええ、相変わらず愛おしいです」


 とにもかくにもウルリカ様の大活躍により、ラドックス襲撃事件は無事に終わりを迎えたのであった。

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