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乱入

 ウルリカ様の逆鱗騒動は、シャルロットの機転により事なきを得た。


 一方そのころロームルス城の応接間では、ロムルス王国と南ディナール王国による同盟が結ばれようとしていた。

 ロムルス王国側の代表者はゼノン王とヴィクトリア女王、そして第一王子アルフレッド。南ディナール王国側の代表者は、南ディナール王国の統治機関である元老院の面々である。


「ロムルス王国との同盟、大変光栄に思います」


「南ディナール王国と同盟を結べること、心より嬉しく思う」


 両国の代表は、順々に固く握手を交わしていく。


「南ディナール王国の皆様、この度は同盟にご賛同いただき感謝いたします」


「いえいえアルフレッド王子、お礼を言うのは我々の方です。ガレウス邪教団なる組織についての情報提供、そして同盟に向けての様々な働きかけ、いずれも感謝に堪えません」


「南ディナール王国とロムルス王国で力をあわせれば、必ずガレウス邪教団を打ち倒せるわ」


「南ディナール王国は平和に向けての尽力を惜しみません、ガレウス邪教団の脅威から大陸の平和を守りましょう!」


 対ガレウス邪教団のために結ばれる同盟。二つの大国による同盟は、ガレウス邪教団を打倒するための大きな一歩となるだろう。


「それにしてもアルフレッドの手腕は見事だったわね、この僅かな期間で南ディナール王国との同盟を取りつけたのですもの」


「大袈裟ですよ母上、私は方々へ頼んで回っただけです」


「謙遜はよせアルフレッド、今回の同盟は紛れもなくお前の功績だ」


 日増しに高まるガレウス邪教団の脅威。その対抗策としてアルフレッドは、南ディナール王国との同盟に向け奔走していたのである。

 外交における手腕は流石の一言だ、小さな女の子にメロメロする癖さえなければ完璧な王子様である。


「それはそうと南ディナール王国の皆様、この度は遠路はるばる来訪いただき感謝しております。本来であれば同盟を持ちかけた私達から出向くべきでしたが……」


「お気になさらずアルフレッド王子。ディナール王の体調を考慮し、ご来訪の申し出をお断りしたのは我々の方です」


「確かディナール王は先月から体調を崩されているのでしたね」


「残念ながら……しかし同盟締結を知れば、喜びで快気されるやも知れません。その際にはぜひ南ディナール王国へお越しください」


「もちろんです、快気の際には必ず訪問させていただきます」


 厳粛ながらも穏やかな雰囲気は、二国間の良好な関係を表している。


「では正式に同盟の締結を……といきたいところですが、同盟締結には王族の承認が必要なのです」


「エリッサ王女の承認ね、今頃はシャルロットと一緒のはずよ」


「ならばエリッサ王女が戻り次第──」


「きいいっ、絶対に許せないわ!」


 ゼノン王の言葉をかき消す、雷鳴のような叫び声。穏やかな雰囲気をぶち壊し、怒り心頭のエリッサ乱入である。


「おやエリッサ様、ちょうど同盟の締結を──」


「帰るわよ、すぐに支度しなさい!」


「はい? エリッサ様?」


 あまりにも突然の出来事に騒然とする応接間。

 そこへ慌てた様子のシャルロットが到着する、残念ながらエリッサの乱入を止めるには一歩遅かったようだ。


「はぁ……はぁ……、間に合いませんでしたわ……」


「おいシャルロット、お前にはエリッサ王女の相手を頼んでいたはず。しかしこれは……一体どうした?」


「ごめんなさいお父様、実はロームルス学園で……」


 ロームルス学園での騒動を聞き、ゼノン王は思わず頭を抱えてしまう。

 その間にもエリッサはギャンギャンと喚いて大暴れである。


「いいから! 早く帰るわよ!」


「まだロムルス王国との同盟は締結されておりません。同盟を締結させるには、王族であるエリッサ様の承認が必要なのです」


「同盟なんて知らないわよ!」


「エリッサ様はディナール王から同盟締結を託されているのです、知らないなどと言ってはいけません」


「うるさいわね! こんな国と同盟なんて結びたくないわ!」


「エリッサ様、今の発言はあまりにも失礼です!」


「私は南ディナールの王女なのよ! 私の言うことを聞きなさいよ!!」


 暴言を吐き散らし、片っ端からものを投げ、もはや手のつけようがない。


「ロムルス王国の皆様、エリッサ様の非礼については深くお詫び申し上げます」


「詫びる必要はない、どうやら我々の側にも落ち度がありそうだ。しかしこの状況で同盟締結は難しいだろうな、差し当たり席をあらためることにするか」


「まことに申し訳ございません……」


 エリッサの乱入によりその場は一時解散、果たして無事に同盟は結ばれるのか。

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