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見知らぬ少女

 囀る小鳥の協奏曲、さざめく虫の交響詩。

 魔人リィアン襲撃から数日、王都ロームルスは平和で穏やかな日常を取り戻していた。下級クラスは授業を再開、生徒達は教室塔二階の大教室へと集まっていた。

 しかし──。


「むむー……授業を受けたいのじゃー……」


 大好きな学校だというのに、ウルリカ様はぐでーんと机に突っ伏している。というのも、この日の授業は自習なのである。


「ロティもヴィクトリア先生もおらんのじゃー……」


 大教室に集まっているのは、ウルリカ様、オリヴィア、ナターシャ、シャルル、ヘンリー、ベッポの六人だけ。クラスメイトであるシャルロットと、先生を務めるヴィクトリア女王の姿はない。


「むむー……退屈なのじゃー……」


「ヴィクトリア様とシャルロット様は公務でお忙しいのだそうです。先生不在なのですから自習をするしかありません、我慢してくださいウルリカ様」


「むー……むぅ! 公務とはなんなのじゃ!」


「商売仲間から噂で聞いたぜ、国外の王族をお招きしているらしい」


「自分も教会関係の知り合いから聞いた、南ディナール王国から王家の方々をお迎えしているそうだ!」


 王族であるシャルロットやヴィクトリア女王は、当然ながら公務を優先しなければならない。

 しかし学校大好きウルリカ様は、そのことにプンプンと腹を立ててしまう。


「ならば他の者に先生をお願いすればいいのじゃ! ゼノンはどうしたのじゃ、クリスティーナはどうしたのじゃ、エリザベスはどうしたのじゃー!」


「ゼノン陛下もクリスティーナ様も公務ですよ」


「エリザベス様は剣術の特訓で、アルテミア正教国を訪問されています。聖騎士全員でアンナマリア様から剣術の稽古をつけてもらうそうです。私も一緒にいきたかったな……」


 どうやらエリザベスだけは別件で王都を離れているようだ。

 何れにせよ誰も彼も忙しい状況に、ウルリカ様はすっかり拗ねてしまう。両手をブンブン両足をパタパタ、駄々をこねる小さな子供だ。


「妾は授業を受けたいのじゃ! 授業授業授業じゃー!」


「落ちついてくださいウルリカ様、ほらクッキーですよ」


「ポリポリ……むうぅー!」


 クッキーの詰まった缶を渡されるもウルリカ様の苛立ちは収まらず、そのまま教室を出ていってしまう。もちろんクッキーの詰まった缶は抱えたままだ。


「ウルリカ様? どこへいくのですか?」


「退屈で死んでしまうのじゃ、外へ遊びにいくのじゃ!」


 昇降機で一階へと降りるウルリカ様。勢いよく教室塔の外へと飛び出したところで──。


「ポリポリ……うむ?」


「……なによアンタ?」


 淡い青色のドレスを纏った、見知らぬ少女と出会ったのであった。

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