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深夜の執務室 その六

 深夜。

 吸血鬼もすやすやお休みの時刻。


 ゼノン王の執務室に、柔らかな明かりが灯っていた。


「ふぅ……」


 深々とソファに腰かけ天井を仰ぐゼノン王、ずいぶんと疲れた様子である。

 そんなゼノン王の元を、大臣ルードルフが訪れる。


「失礼します」


「ルードルフか、こんな時間にどうした?」


「遅くまでどうしたものかと心配になりまして」


「執務に集中しすぎてな、気づけば真夜中だ」


 体を反らせグッと伸びをするゼノン王。長時間同じ姿勢でいたらしく、背骨はバキバキと音を鳴らす。


「お手伝いしましょうか?」


「その必要はない、なぜなら執務は片づけたからな」


 そう言うとゼノン王は、ドヤッと不敵に笑ってみせる。


「えっ、ゼノン王が執務を片づけた!?」


「んん?」


 ルードルフの反応に、怪訝な表情を浮かべるゼノン王。


「どういうことだ?」


「いつも執務を溜め込んでいる“あの”ゼノン王が、まさか執務を片づけるとは……もしやゼノン王の偽物ですか?」


「違うわ、失礼なことを言うな!」


「おっと、申し訳ございません」


 冗談交じりに会話をする一国の王と大臣、信頼関係のなせるやり取りである。


「エリザベスの成長に感化されてな、俺も負けてはいられないと思ったのだ」


「曲者揃いの聖騎士達を、見事にまとめたそうですね」


「会議でのエリザベスは立派だったぞ。それに比べて俺ときたら、いつまでも執務を溜め込んでいてはエリザベスに笑われてしまうだろう」


 ゼノン王は満足気に笑いながら、のそのそと体を起こす。


「さて、寝る前に一杯……」


 言いかけたところでゼノン王は、チラリとルードルフの方を見る。まるで欲しい物をねだる子供のような仕草だ。


「……まあいいでしょう、今日は私もつきあいます」


「よし、晩酌の許可が下りたぞ!」


 晩酌を許され、酒瓶の並ぶ棚へと走っていくゼノン王。先ほどまでの疲弊しきった様子はどこへやら。

 いそいそと晩酌の準備を済ませ、ゼノン王とルードルフは酒の注がれたグラスを掲げる。


「では、エリザベスの成長に乾杯だ!」


「ええ、乾杯」


 カチンと鳴り響くグラスの音、こうして静かな大人の夜は過ぎてゆく。


 ちなみにこの後、調子の乗って飲みすぎたゼノン王は二日酔いで死ぬほど苦しんだという。

 しかしそれはまた別のお話。

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