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微笑

「うーん……」


 ウルリカ様達の後を追いかける、ガレウス邪教団の魔人リィアン。

 当初こそヨグソードを発見して勝ち誇った笑みを浮かべていたものの、今やその表情はどんよりと曇っている。


「あれはヤバすぎるでしょ……」


 ヴァーミリアとヴァーミリアに抱っこされっぱなしのウルリカ様を見て、リィアンは額に薄っすらと冷汗を浮かべる。


「ザナロワの言ってた恐ろしい怪物ってあの二人のことね、確かにアレは手に負えない」


 リィアンもまたアブドゥーラやザナロワと同じように、ウルリカ様とヴァーミリアの実力に一瞬で気づいたのである。


「でもなんとかしてヨグソードを奪いたい、でもあんなのと戦ったら骨も残らなさそう……」


 リィアンは行き交う人々に紛れながら、慎重にウルリカ様達の後をつけて回る。傍から見ると怪しい動きをしているにもかかわらず、周囲の人々は一切リィアンのことを気に留めない。アブドゥーラやザナロワと同じように、認識阻害の魔法によって注意を散らしているのだろう。


「なにかいい方法はないかな──っ!?」


 次の瞬間、リィアンの背筋にかつてない悪寒が走る。買い物を楽しんでいたヴァーミリアの視線が、スルリとリィアンの方を向いたのである。


「ヤバっ」


 視線を動かすと同時に、ヴァーミリアは小さく唇の端を吊り上げる。

 その間わずか一秒弱、身の危険を感じたリィアンはすぐさま近くの路地裏へと避難する。


「はぁ……はぁ……、まさか見つかった?」


 破裂しそうな胸を押さえ、必死に呼吸を整えるリィアン。


「きっと大丈夫、リィが見つかるはずないもん……!」


 額に浮かんだ汗を拭うと、気を取り直して顔をあげる。


「アレに勝つなんて絶対に無理……でもリィは諦めないんだから!」


 そう言うとリィアンは、路地裏の闇へと消えていくのだった。



 ✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡



 一方こちらは、休日の買い物を楽しむウルリカ様達。

 抱っこされっぱなしのウルリカ様はぐでーんとだれてしまっている。しかし抱っこしているヴァーミリアは一向にウルリカ様を放そうとしない。


「ウルリカ様を抱っこ出来るなんて最高だわぁ! それに人間界は可愛いものでいっぱいね、とっても楽しいわぁ!」


「ふふっ、気に入ってくれてよかったですわ」


「ええ、可愛いもの大好きよぉ」


 そう言うとヴァーミリアはスルリと視線を遠くへ向け──。


「ふふっ、ホントに可愛いもの大好き……」


 ──薄暗い路地裏を見つめながら、ニヤリと怪しく微笑むのだった。

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