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7. 今日の出来事


 寮の自室に戻ってきたケイは、今日の事を思い出していた。


「今日はやたらと色んな事があったなぁ。スキルアタックって……、あれ凄い。魔法スキルが使えるようになるって何だか怖いけど、ちょっと楽しいかも」


 ケイは左手の人差し指を立て、そこに軽く意識を集中させて念じてみる。


 ――燃えろ!


 その瞬間、立てた人差し指の上に小さな空間の歪みが現れ、ロウソクのように小さな炎が立ち上った。


「おぉ、凄い。こんな事出来ちゃうんだ、私」


 そんな事が出来るようになってしまったのは、どちらかと言えば不幸な側面の方が大きいだろう。

 ウイルスが発症して性別が変わる、若返る、それだけならば良かったのかも知れないが、魔法のような事が出来るようになってしまったため、外界とは遮断され幽閉されてこの島にいるのが彼女たちが置かれた現実である。

 島内では自由に行動ができたが、基本的人権の側面から見れば、完全に彼女らのそれは確実に侵害されていたが、ケイはその事に関して特に不満を感じてはいないようだった。

 

 光島に連行された者たちは、初めは皆一様に自分の変化に戸惑うが、その変化に順応するための『戸惑いの期間』は短く、大抵の者は三、四日で順応する。順応してしまうと思考や行動などが完全に女性化し、女性そのものになる。

 男性だった頃の記憶は当然残っているが、そこに違和感を全く覚えないのが『エリザベス・ウイルス』の特徴の一つだとも言えた。


 そして、この島で彼女たちは完全に女性となって生活をし、ウイルスが発症した副作用のスキルアタックでブラック・フラッグスと戦う。

 これが日常であり、宿命だった。 


 ケイはベッドの上で横になり、天井を見つめたままぼーっとしていた。

 今日はスキルアタックなどという聞き慣れない初めての経験をしたこともあったが、それと同等、いやそれ以上に衝撃的な出来事があった。


 ――あの保健室でのこと……。


 広瀬とのことを思い出すと、ケイはなんだか恥ずかしくて胸が苦しくなり、顔は上気して恍惚とした表情になってくる。

 保健室でのことは意識がはっきりしないままでの出来事だったため、その記憶は定かではなかったが、あの時、広瀬がケイに何をどんな風にしたのか――それを思い出すことに一抹の不安と若干の罪悪感がありつつも、考え始めるとこの淫靡な気持ちを制御するのは困難になっていった。

 

 ――いつの間にかケイは生まれたままの姿になっていた。

 『イケナイ』事をしている気になりつつも、身体と心はピンク色をしたオーラに包まれ、ふわふわと浮かんでいるような気分になる。

 聞こてくえるのは切なそうに漏れる自分の声だけで、その世界に陶酔し、勝手気ままに動く手足を自由にさせて、快楽の海で溺れていた。

 


 ――その時である。


『非常招集、非常招集。生徒は全員戦隊毎に集まり、リーダーの部屋で待機せよ。繰り返す、非常招集、非常招集。生徒は全員戦隊毎に集まり、リーダーの部屋で待機せよ』


 突然、寮内の緊急放送が流れた。


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