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6. ピンク色の稲妻

 

「――うーん……」

「……可愛いわね、あなた。こうされるのが好きなのかな?」


 ケイはまだ意識がはっきりとしないが、耳元で誰かがそう囁いてるのが聞こえる。


「これが好き?」

「あ……。だ、だめ……」

「可愛い子ね……」


 囁いている声の主が何かの動きをする毎に、頭の中にピンク色の稲妻が走り、その度に身体がピクッと反応して声が漏れる。


 誰かの指が艶めかしく動く度に『ズドーン、ズドーン』と、脳内にピンク色の稲妻が何度も閃光を放つ。


 ――全身が痺れるような今までには経験したことがない感覚。


 まさに快楽だった。このままでは自分がどうにかなってしまうのではないかと不安を覚えるほどの悦楽。 

 止めて欲しいとは言えなかったし、止めて欲しくなかった。

 脳内に鳴り響く落雷回数が増えれば増えるほど、頭の景色はどんどんピンク色に染まっていった。


「あぁ、それ以上されたら、もう……、だ、だめになっちゃう……」




 ――ウィーン


「ケイ、大丈夫?」


 第三魔法少女隊のメンバーが実習授業が終わり、気絶をしたケイを見舞いに保健室に入ってきた。


「あ、みなさん、ここは私に任せておいてくれていいのよ?」


 ベッドの周りを仕切ってあるカーテンの中から、落ち着いた声で保健指導教官の広瀬が言う。


「でも、急に倒れちゃったから心配で。広瀬先生、ケイの具合はどうですか?」


 和泉がカーテン越しに広瀬に尋ねる。


「そうね、軽い貧血みたいなものだから、そんなに気にしなくても大丈夫よ」


 広瀬は若干上気した顔でケイに微笑みかけ、彼女の乱れた服を直し、ゆっくりとカーテンを開けて何事もなかったように和泉たちの前に現れた。


「じゃ、ケイはもう教室に連れて帰ってもいいですかー?」


 ジュンがそう訊くと、広瀬は『いいわよ』と頷く。


「ケイ、大丈夫だった? 急に倒れたから心配しちゃったよぉ」

「そうそう、びっくりしちゃった」


 第三魔法少女隊のメンバーたちがそう言いながら、ケイのベッドの側まで近寄り心配しながから声をかけた。


「う、うん。大丈夫みたい……、かな?」


 ケイはまだ少しぼーっとしていたが、周りに気付かれないようにズレているブラジャーを直しながら、メンバーに話しかけられ意識が段々とはっきりしてきた。

 ただ意識が明瞭になるに従って、下半身に妙な違和感を感じた。


「じゃ、教室に戻ろう」


 ソウコがツインテールを揺らしながらケイに話しかける。


「じゃ、またね、北川さん。気分が悪くなったらいつでもいらっしゃい。お大事にね」


 広瀬がそう言いながら、ケイに微笑んだ。


「はい、先生。ありがとうございました」


 ――変な夢みたなぁ……


 ケイはそう思いながら広瀬に挨拶をして、保健室を後にした。



 ―――――――――――――



「本当に大丈夫?」みのりが歩きながらケイに話しかける。


「うん。身体は大丈夫なんだけど、なんか、そのぉ……」


 ケイはもじもじしながら、みのりに応える。


「なに、どうしちゃった?」

「ん、ちょっと変な感じって言うか……。ちょっとトイレ行ってくる」


 ケイはそういってトイレに駆け込んだ。そして恐る恐る自分の下着を触ってみて驚いた。


「なに、これ……。漏らしちゃった? 恥ずかしい……」

「ケイ、ケイー、大丈夫ー?」


 ドア越しにみのりが話しかける。


「うん、大丈夫。ちょっと……」


 ――ケイは第三魔法少女隊のメンバーに、保健室での出来事を恥ずかしそうに話した。記憶が曖昧で抽象的な説明しか出来なかったが、一同はそれを食い入るように聞いた。


「――それは間違いなく広瀬にいたずらされたのよ。広瀬のやつ……」


 腕を組んだまま話しを聞いていたソウコが憤った。


「私、他のグループの人から聞いたことがあるの、広瀬は女の子が好きらしいって」と和泉が話す。

「あ、それ私も聞いたことある。他のクラスの生徒が気分が悪くなって保健室に行ったら、そのまま泣きながら寮に帰っちゃって、しばらく登校出来なくなったって。理由を訊いても何も答えないから結局その理由はわからなかったんだけど、広瀬がなにかしたのは間違いないって言ってた」


 ソウコが更にそう付け加えるように話すと、みのりも「他の生徒から聞いた話なんだけど……」と前置きをして話し始める。


「広瀬ってすごくグラマーで美人でしょ。グラビアモデルみたいなスタイルだし。そのせいかわからないんだけど、学校の中には広瀬の熱狂的なファンが居るって」

「あぁ、それジュンも知ってるよー。『ユリスト』でしょ? 広瀬友梨の友梨からもじって、『ユリスト』。別に悪い人たちじゃないみたいなんだけど、放課後とかに、いつも保健室に行ってみんなでなんかしてる、って聞いたよー」

「そこで、なにしてるのやら……」


 和泉も腕を組みながら呆れたように独り言。


 彼女たちはその愛らしい見かけとは違い、生まれつきの女性というわけではない。

 中身は酸いも甘いも噛み分けた立派な三十過ぎの男たちである、普通に百合系の人間なんだなと想像出来る。

 ただ理解出来ないのは、本来男だった者が女性になって別の女性化した人を好きになるのか、という点だ。


 ――これはホモなのかレズなのか?


「――ま、いいわ。他人は他人。私達は自分のしなければいけないことをするだけのこと。ケイはちょっとショックだったかも知れないけど、これも一つの経験だと思ってくよくよしないで欲しいけど……ケイ、平気?」


 和泉にそう言われたケイは、「別に嫌な思いをしたわけじゃないから……、大丈夫だよ」と答える。


 ――それに、とても気持ちよかったし……

 とは言えないケイだった。


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