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4. 戸惑いの期間

 

「――この島に来た時、色々説明受けたでしょ?」と和泉が綺麗な顔を少し歪めて呆れ顔になる。


 ケイは入島時に島での暮らしについて詳細に説明をされたが、何も記憶していなかった。


 政府関係者から島での生活に関して説明を受けている時、ブラジャーと胸が擦れる刺激のせいで常に脳内麻薬が出続けてすっかり興奮してしまい、またブラジャーに胸が擦れてムラムラするという、変態スパイラルに陥ってしまい、ずっともぞもぞもぞもぞし続けていた。


「――そうなんだ。私なにも覚えてない……」


 物資は毎日のように狭間島に到着していた。

 光島と狭間島は橋を介して繋がっていたが、狭間島と黒島には橋はなく、光島と黒島間には交通手段は何もない。

 毎日のように物資が届くのは、それが『ブラックフラッグス』に強奪され、満足な物量が到着しないことが原因の一つとされていた。

 その件について政府は、日本軍の投入を何度も検討していると『島内では』ニュースになっていた。


 ただ実際は、財政が超黒字の日本では国内で戦うなどという野蛮なことを行うくらいならば『物資をどんどん送ればいい。その方が平和的な解決だ』という『事なかれ主義』で済ませているのだと、実しやかに囁かれていた。 



「――では、まず魔法少女隊ごとに別れて。順番に『フォーメーションアタック』を行ってもらいます」


 そう言われて、それぞれが自分の属する魔法少女隊ごとに分かれて実習室の隅々に散る。


「私達はどうするの?」


 ケイは全く何もわからないまま、第三魔法少女隊のメンバーに問いかけた。


「ジュンたちはー、今日完成したばかりの魔法少女隊だから、いきなりそれは無理かもですー」


 ジュンがおっとりとした話し方で応える。


 ジュンこと『相間ジュン(あいまジュン)』は身長約百五十センチ位で第三魔法少女隊の中では一番小さく、髪型はショートカット。愛らしい女子で、ケイより胸が大きく、歩くたびに上下に揺れるその豊かな乳房は女子高生化したケイでもガン見してしまう程の立派なものだった。


「そうね、今日はまずケイの火属性としての能力を見極めないと、どの『フォーメーションアタック』を使えばいいのか決められないわね」


 第三魔法少女隊は和泉がリーダーだった。


「では、私がスキルレベルを計測してみるから、ケイはスキルアタックをしてみて」


 そういってソウコが専用端末のアプリを起動して、ケイの方に端末を向ける。


「スキルアタック……? なにもわからないんだけど、どうしたらいいの?」


 ケイが誰と問わずそう言うと、みのりがアドバイスを始める。


「まずね、『火属性』なのはわかってるんだから、対象物を決めて、それを燃やしてやるってイメージを強く思えばいいの」

「燃やす……? うーん……」

「じゃ、私がまずスキルアタックを見せてあげるね」


 みのりはそう言うと、実習室の壁際に並べてある人型の模型に向かって詠唱した。


「デ・ウォータ!」


 みのりが叫んだその刹那、彼女の身体の前にある空間がぐにゃりと歪み、その中心から大量の水が放出され、その水圧に拠って模型は木っ端微塵に砕け散った。


 「え? なに? 今の!」

 ケイは驚愕する。


 ――エリザベスウイルスが発症した者は、それぞれの資質によって、大気に含まれる様々な元素などを反応させて自由にコントロール出来るという副産物を具有した。これは属性によって起こる現象が異なり、火属性は燃焼、水属性は水または凍結、風属性は断裂、闇属性は重力、愛属性は治癒・防御がスキルアタックとして発動した。

 また、個々のスキルアタックを同時に発動させる事により爆発的な反応を起こすことが可能で、これが『フォーメーションアタック』と言われる集団攻撃であった。


「こんな凄いことが出来るのだったら、ここを抜け出して簡単に本土に戻れるんじゃ?」


 ケイがあまりにも凄いみのりのスキルアタックを見て、思いついたように呟いたのを聞いた和泉が応える。


「ケイ、あなた最初に光島に来た時に説明受けたでしょ? この島から十二キロ以上離れると脳内に埋め込まれたチップが破裂して、あなた死ぬわよ?」

「え? うそ? 全然覚えてない……」


 ――この群島に居る者はその強大な力を外界で使うことと逃亡を禁じるため、全員が入島する際に脳内に破壊チップを埋め込まれていた。

 同様に政府と軍が管轄する狭間島の港湾施設に侵入しようとしてもチップが破裂するようにプログラムされていた。


「だって、そんな難しい話されたかもしれないけど……。ブラジャーとかが気になってたし、スカートもなんだかスースーして落ち着かなかったし……」

「わかるー。ジュンも最初そうだったよぉ。なんかねー、全然安心できないって言うかー。よくこんな格好してられるなーって思ったー」


 ――ここに居る者たちは三十歳の誕生日を迎えた途端、童貞だったため強制連行されてきた非リア充の残念な男たちである。だから当然のごとく女性化した自分の身体に興味津々だったし、服装や下着に慣れるまで時間がかかった。

 しかし、その『戸惑いの期間』を過ぎてしまうと男性だった頃の記憶は持っているが、思考や仕草など全ての面で女性になってしまっていた。


「うん、それはここにいるみんなが経験したことだからわかるけど、重要なことはちゃんと覚えてないと……、あなた死ぬわよ?」


 和泉にそう言われて、ケイはハッとした。


「うん、わかった。これからは気をつけるようにする。……それで、スキルアタックってどうすればいいの?」

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