2. 魔法少女たちの学園生活
「――それで、今から百五十年程前、日本は少子化が進行し人口が五千万人を割ってしまう事態になっていました。そこで当時の政府は、打開策を懸命になって探したんですね。外国人の移民を多く受け入れるなど考えられる手はあれこれと打ったのですが、その場しのぎの政策で、根本的な問題の解決には至らなかった……」
佳祐はあの誕生日の朝、あっという間に見ず知らずの町まで連行されて、三十歳になったのにも関わらず全寮制の高校に入学されられていた。
エリザベスウイルスが発症してしまい、可愛い巨乳の女子高生となってしまったためだ。
その高校である『光島高校』は、政府が管理している瀬戸内海に浮かぶ三島からなる群島の一つ『光島』にあり、光島の島民は全てウイルスが発症した元童貞の男性たちだった。
群島には光島以外に二島あり、一つは『黒島』、残りが『狭間島』と呼ばれていた。
狭間島は、この三つの島々と外界を繋ぐ唯一の島で港と空港があり、毎日のように生活必需品や食料などが送られて来ていた。
他の市街地などは内乱が続く戦場のように荒廃していて、とても人が生活できるような場所ではなかった。
一方、黒島については謎に包まれていた。
判明しているのは、『ブラックフラッグス』と呼ばれる悪党どもが巣食っており、物資を強奪したり光島の者を拉致したりしている事だけだった。
「――ちょっと北川さん! 聞いてるの!?」
突然女子高生となった佳祐は、昨夜も自分の身体を念入りに研究していて、その自分の身体付きを思い出してぼーっとしていた。
――女の子の身体ってこんなになってるんだなぁ。柔らかいし、どこ触っても気持ちいいし……
「おい!、北川ぁ!!」
「あ、はい!」
「あなたは、毎日毎日ぼーっとしてるわね。どうせ自分の身体のことでも思い出してたんでしょ? もうここに来て一週間よ? そろそろ自分の身体に慣れなさい!」
二十人のクラス中の生徒たちがクスクスと笑っている。
担任の関谷は何でもお見通しのようにそう言い放ち、眼鏡の縁を右手で軽く押し上げると、授業を続けた。
「――『エリザベス・ウイルス』は、これが発症すると性別が変異し、しかも十代半ば辺りの若者になってしまう。でもこの効果があるのは、長年の研究の結果一定の条件を満たした者だけでした。さてその条件とは……、えーっと、和泉さん分かる?」
関谷にそう言われて、起立した和泉優子は如何にもクールビューティーといった出立ちのルックスをしており、クラスでも一目置かれた存在の優等生だった。
高い身長に黒髪のさらさらロングヘア。更に性格も温厚でクラスの人気者という、絵に描いたヒロイン属性の女子だった。
「はい。その条件とは、ウイルスは少なくとも生後三ヶ月以内に摂取すること。ウイルスは四世代に渡って日本人のDNAを保有していた場合のみ発症する、ということです」
「そうですね。付け加えると、ウイルスが発症した副作用として、元々本人が持っていた資質が大きく向上するという特性が挙げられます。そのお陰でみなさんは魔法のような特殊能力が使えるのです」
――日本政府は少子化対策として、このウイルス摂取を国民に義務付けたが、ウイルスが発症したものは一般人から隔離した。
その原因はこのウイルスが発症した際の副作用である特殊能力が、あまりにも危険だったのである。
この特殊能力は一見、魔法のように発動するため彼女たちは魔法少女と呼ばれた。
更に、政府はウイルスが発症した者は若年になってしまうことから、一同に集め高校生として全寮制の学校に押し込め一括管理していた。
ケイとなった佳祐は女子高生の制服や下着――スカートやブラジャーにまだ馴染めないでいた。
――下半身はスゥースゥーするし、胸は締め付けられるし、慣れないな……。
授業中でも常に自分の身体の変化が気になって仕方がなかった。
身長は百六十センチ程度で、明るめのショートカット。顎が少し尖ったようなシャープなフェイスラインの美少女だった。
全体的に引き締まった身体付きだったが、胸はやたらと大きかった。歩く度に胸が揺れ、その度に意識してしまい、ちょっと変な気分になる。
それでもケイは日に日に女の子に順応しているのが自分でも驚くほどだった。
特にお風呂に入った時に今の姿を映した時は、見えているのが自分の身体なのに恥ずかしいやら嬉しいやら――童貞のまま大人になったケイは、なんだか得をしてる気分になった。
「タダで女子高生の裸が見放題。これは嬉しすぎる!」
――女の子の身体ってこんな風になってるんだな。不思議だなぁ……。
自分のたわわな胸を見たり触ったりする度に複雑な気持ちが交差したが、悪い気分ではなかった。
この島に来てから、ずっと自分の身体のことが気になって仕方ないケイだった。
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