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雨音の旋律  作者: rit.
7/8

#5


「じゃあ、つゆりとゆうくんは何でもないんだね?」


「そう。桧山はつゆりに秘密を知られて言いなりになってただけだった。ちゃんと真実を聞き出したんだからもういい?」


全てを知って、れいに情報を渡した。


流石に、つゆりのお母さんが桧山のお母さんだなんて言えないけど…。


「ありがとう…あのさ、こっちゃん。」


「何?」


「告白…しようかな。ゆうくんに。」


予想通り。


まぁ、そうだよね。普通。


全然、止める気は無い。


れいは…私の知らない優雨を知ってる。


たとえこれで、れいと桧山が付き合うことになったって…。


「いいと思うよ。つゆりと何もなかったって事は、彼女居ないんだし。私なんかとっくの前に振られた身だよ?それに、気持ちは伝えた方が絶対良い。」


「こっちゃん!ありがとう。」


何故か、胸が痛かった。


私が桧山と別れた理由…それは、お互いに嫌いになったわけではない。


中学3年の6月、体育祭が終わった後。


桧山から言い出した。


桧山は体育祭の間もずっと保健室に居て、私達と一緒に競技に参加したりはしなかった。


そんな桧山が心配で、帰り際に保健室に寄ったんだ。


桧山は、窓からグラウンドを眺めていた。


運動委員会の人たちが、夕焼け空の下、グラウンド整備を行っている。


知らなかった。


保健室の窓からなら、丁度運動場が眺められるんだ。


窓の外を見ながら、何か考えている様子だった。


そして、しばらくして、桧山は口を開いた。


「俺がこんなんじゃ、心珀の事、ちゃんと見てあげられないから」


桧山は、そう言っていた。


だから、高校に上がって保健室登校を辞めたのも、強くなろうとしたからなのかもしれないって、思う時がある。


私は知っている。


優雨が、本当はそんなに強くない事。


今でも時々、音楽室でピアノを触っている事。


ピアノなら家にもあるだろうに何でって…まぁ、それももう分かってる。


音楽室にいる時、桧山が待っているのは母親じゃなくて、私。


桧山はきっと、母親からも逃げて、私からも逃げて…一人で苦しかったと思う。


ずっと、心の何処かで分かってた。


それなのに私は…


気づかないふりをしていた。


桧山はずっと、私の事を思っていてくれたのに…。


桧山から逃げたのは…私か…?


立ち向かってる桧山と逃げてる私。


あぁ、なんだ。


私、桧山よりずっと…弱いや。


「こっちゃん?どうかした?」


ちゃんと向き合おう。


桧山にも、れいちゃんにも。


「ううん、いってらっしゃい!れいちゃん。」


そう笑ってみせた。




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