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雨音の旋律  作者: rit.
5/8

♯4

「志野の母親、母さんだった。」


放課後の音楽室。


弾くわけでもなく、ピアノの蓋を机代わりにして、突っ伏していた。


あの時と同じ状況。


偶々私が音楽室を通りかかったら、桧山が居たのだ。


放っておいたら、壊れてしまいそうで…

放って置けなかった。


今回の一連の真相、つまりは、桧山はつゆりから母親のことを聞き、つるむようになったらしい。


母に会いたいか、と聞かれ、言いなりになっていたが、結局会うことはできてない、と言う。


「よく考えたらさ、今更会いに行っても迷惑だったよね…。」


と、泣きそうなのを我慢している様子だった。


「…久しぶりに弾こうか?」


そう提案すると、桧山は体の向きを変えピアノに背を向けた。


これはいつも、私が桧山に弾く時の体制。私が弾いて、桧山は背中合わせに座る。


そうすると私が弾いているところが見えないから、母親のピアノと重ねられるのだ。


けど、そんなの絶対出来ないし、やっぱり私のと母親のとは違うって、桧山が1番よく分かってると思う。


〜〜♪


「練習したの?」


後ろを向きながら、桧山は言った。


「してないよ。…あのさ、優雨はまだ私の事好きだったりする?」


「…うん、好きだよ。…心珀は?」


「…嫌い。」


「そか。」


〜〜♪


「…そ。」


「何?」


「…嘘。ずっと好きだ…バカ。」


「…ありがと。」


「優雨は弾かないの?」


「俺は…弾けないの知ってるでしょ?」


初めて会った時から、桧山がフルで一曲弾ききったことはなかった。


それは、ピアノを弾くと…思い出すから。お母さんの事を。


「指…動かない?…今も?」


〜〜♪

〜〜♪


私の音に桧山の音が合わさった。


「弾けるじゃん。」


「心珀と一緒だからかな…。」


〜〜♪

〜♪


「ずっと…」


「?」


「って言ったよね?…別れてから、…ずっと?」


「そうだけど…。」


「俺も…あの後結局、母さんも心珀もいなくなって、逆にダメになってった。高校も、心珀がここ受けるって聞いてついてきた。」


「え…。」


桧山が演奏を止めた。続いて私も弾くのをやめる。


桧山は、泣いていた。


「何時もの?」


「ごめ…大丈夫…だから…」


訳もなく涙が出る。

桧山は中学生の時からそんな風になる時があった。


そんな時はしばらく黙って抱きしめてあげる。


私しか知らない事。


周りの取り巻き達は、桧山の弱いところを一切知らない。


本当は、まだ心が癒えてないから。


ずっと、苦しんでる。


「涙、止まらない?」


「もう少し…」


特にって理由は無いんだ。

けど、訳もなく悲しい…そんな感情になってしまうらしい。


いつからなんだろう。


私と出会う前はどうしてたのか…別れた後は?…


「ごめんね…こはく…。迷惑かけて。」


「私にはかけてもいいよ。じゃないと優雨…なんでもない。…迷惑なんて思ってないから、いつでも頼って…。」


「ありがと。」


涙を袖でぬぐいながら、そう言って笑顔を見せた。



順番的には、♯2の前の時間設定になります(汗)

ややこしくてすみませんm(_ _)m

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