現代に生きる「魔術師」
光に飲み込まれた先で、私の目に映ったのは、、、
「……ね…猫…?」
私の胸の上に乗ってじっと私の顔を凝視してくる、この黒猫とダークオークの少し古びた天井だった。
私が寝かされていた古ぼけた鉄脚のベッドから体を起こすと、その猫は焦げ茶色の床板に着地するや否や、突然、古めかしいストーブの裏に隠れてしまった。
すると直ぐに、
「こら、九泉!お前という奴は……」
と少し怒ったような女性の声が段々と近づいてきて、怖さと驚きとが混ざって、うっかり
「あっ…」
と声を漏らしてしまったが、閉ざされた扉から出てきたのは、白く川の清流のように美しく流れる総白髪に、まるで魔法使いのようなファンタジーな帽子を被った女性だった。その姿は若く、23歳で死んでしまった私と大差のない様に見受けられた。
「──おや?お目覚めの様かな?」
ゆったりと落ち着いた物腰でその女性は私に声を掛けてきた。
驚いた様子の私を見ると、彼女は声を続けて、
「信じられない、というのも無理も無い。」
と言葉を繋ぎ、こう言う。
「───自己紹介をしなければな。」
その女性は咳払いをすると、
「私の名前は御環 白泉。」
と、キラキラネーム顔負けの希少度高めの氏名を名乗り、
「──魔術師をやっている者だ。」
信じ難い言葉と共に笑みを浮かべてみせた。