063 幼女カフェ
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…………。
幼女株式会社の公式SNSのつぶやき。
「今日は出張のため秋葉原まできました。平日ですが観光客の姿が目立ちます。近ごろは外国からの団体さんも多いですね。……写真は中央改札口を通り抜ける瀬古いのり代表」
神宮寺あすかのSNSからのリプライ。
「お土産買ってきて〜。秋葉原名物・幼女まんじゅう的なやつ……」
それに対するリプライ。
「神宮寺さん、公式SNSに向かって私利私欲を垂れ流す行為は慎んでください(怒)」
それに対するリプライ。
「公式SNSって……どうせ中身はゆり姫だろ? ケチなことはいうなよ〜」
それに対するリプライ。
「僕はゆり姫じゃありません! 公式です!」
それに対するリプライ。
「いやいや! そのアカウント名で僕はないだろ! おかしすぎるだろ! 認めろよ!」
公式SNS(姫井)と神宮寺SNSの口喧嘩。
ときどき発生する名物みたいなものである。
※ ※
メイドカフェに代表されるようなコンセプト喫茶。
幼女が溢れるご時世でもなかなかの人気を誇っている。
たくさんの猫ちゃんを放し飼いにしたり。
アニメの世界観を打ち出したり。
ミリタリーに特化したり。
十人十色の欲求を満たすため時代とともに進化してきた。
やっぱり一番人気なのは王道のメイドカフェだ。
『女の子でも行きたくなる』をテーマにしているお店もあり、コア層向けという印象も薄れたせいか、利用者は年々増えているらしい。
そんな中、ものすごい勢いで台頭してきたカフェがある。
幼女による幼女のための喫茶。
ずばり幼女カフェだ。
幼女と銘打つくらいだから店員さんはすべて幼女である。
そして利用者もほとんどが幼女なのだ。
まさに幼女の理想郷といえるだろう。
「はい、僕です。姫井です」
姫井がどこかへ電話を掛けはじめる。
「いま駅の改札を出ました。これから向かいます。三人です。…………そうです、今日は社長もいます。もう一人は会社の後輩です」
行きつけの幼女カフェへ連絡しているらしい。
事前に予約をするなんて馴染みのキャバクラみたいだな。
「では行きますか。歩いて五分くらいの場所です」
「姫井さんの行きつけですよね? 何という店名なのですか?」
「絶対幼女領域・ろりぃたぱみゅぱみゅです」
「……すみません、もう一度教えてもらってもいいですか?」
「……絶対幼女領域・ろりぃたぱみゅぱみゅです」
「…………やっぱりもう一度」
「…………絶対幼女領域・ろりぃたぱみゅぱみゅです。それと……」
ブルーサファイアの瞳が睨みつけてくる。
もしかして癪にさわったか?
「僕が噛むと思ったら大間違いです。絶対幼女領域・ろりぃたぱみゅぱみゅ。これは百回連続でもきれいに発音できます。なぜなら……」
姫井が財布の中から一枚のカードを取り出した。
ラメ加工に、ホログラム加工に、箔押し加工にと、かなり煌びやかな装飾が施されている一枚だ。
「僕は最上位のダイヤモンド会員なのです。ただのダイヤモンド会員ではありません。第一号のダイヤモンド会員です。これが何を意味するのかというと……」
「姫井さんはお店のオープンから毎週通っている常連中の常連だと?」
姫井の頷くアクションに合わせて頭の黒リボンが揺れた。
「そうです。須田くんは理解が早くて助かります。しかも早くポイントを貯めるためには、多額のお金を落とさないといけません。まさにリアル課金です。……そして僕には胃袋が小さいという弱点があります。少ないカロリー摂取で多くのポイントを集められるよう、緻密に計算する必要があります。つまり効率のいい課金方法が求められるのです」
さっきまで黙っていた社長がクスクスと笑いだす。
「姫ちゃんは熱中しやすい性格だよね。そのくせ継続力もあるよね。コンスタントに頑張る姿は素直に尊敬しちゃうな〜」
「恐れ多い……おもに神宮寺さんとの折衝で溜まりに溜まったストレスを発散しているだけです。さっきのSNSだって……」
「そこはあすかが原因なんだ?」
「そうです。犬猿です」
どっちが犬でどっちが猿なのだろう?
そんな野暮なことを想像しながら姫井についていく。
「にしても面白いお店の名前だね。絶対幼女領域・ろりぃたぱにゅ……あれ? ぱにゅぱにゅ……う〜ん……」
「違いますよ、社長。絶対幼女領域・ろりぃたぱむぱむ……いや? はにゅはにゅ?」
「マサくんの方が発音できていないよ〜。ぱにゅぱにゅの方が近いよ〜」
「ぐぬぬ……舌の筋肉がつりそうです」
「わかる〜。早口言葉より難しいね」
俺と社長がともに大苦戦していると、
「絶対幼女領域・ろりぃたぱみゅぱみゅ。これは百回連続でもきれいに発音できます」
姫井が得意そうに、ふふん、と鼻を鳴らした。
これもロリコン愛のなせる技である。
にしても……。
絶対幼女領域?
男なら入店お断りとかないよな?
そういう心配をしだすと急に緊張してきた。




